「すき家」になるのか、「吉野家」で居続けるか
郊外ロードサイド店と都心店の違いを考える場合、牛丼チェーンの「すき家」と「吉野家」を比較するとわかりやすいだろう。吉野家はサラリーマンや独身男性をメインターゲットとし、都心の駅前やビジネス街に立地していることが多い。一方、すき家は郊外ロードサイドが多く、そういった立地ではファミリー層をメインターゲットとしている。
吉野家はいきなり!ステーキに形態が近く、すき家はステーキ宮などファミレスに近いといえるだろう。吉野家は近年こそメニューの幅が広がってきているものの、それまでは「牛丼一筋」をうたって牛丼に特化していた。
これはいきなり!ステーキのステーキ特化に近い。客の回転が速いのも両者は似ている。一方、すき家は「ファミリー牛丼店」として幅広いメニュー構成や豊富なトッピングを押し出し、ファミリーでも楽しめるようにしている。
郊外ロードサイドでファミリーを取り込むには、すき家やファミレスのようにメニューなどを相応に変更すべきだが、いきなり!ステーキはそうはなっていない。そのため、集客に限界が生じ、苦戦するようになったと考えられる。
今後はペッパーランチの郊外出店を強化予定
面白いことに、前述の「いきなり!ステーキ 君津店」は閉店に追い込まれたものの、自社の別業態のステーキ店「ペッパーランチ」に転換して新たに勝負に挑むという。
ステーキ店で失敗してまたステーキ店で勝負するというのは解せない面もあるが、ペッパーランチはハンバーグメニューの種類も多く、主戦場のショッピングセンター(SC)内でファミリー向けに営業してきた歴史が長いこともあり、郊外ロードサイドでもファミリー層を取り込んで勝負できると判断したのではないか。
ペッパーランチが郊外ロードサイドに初めて出店したのは昨年12月と、いきなり!ステーキよりも遅い。まだ店舗数は少ないが、自社競合解消への対策として今後はペッパーランチのロードサイドへの出店を強化していくという。席やレイアウトなどをファミリー向けにすることで、ファミリー層の取り込みを狙っている。
いきなり!ステーキは、郊外ロードサイドでの出店のあり方を大きく見直す必要があるだろう。大胆な店舗閉鎖が必要になる場面も出てきそうだ。収益性を回復できるか、正念場に差し掛かっている。