ロードサイドでは自社競合も目立つ
「いきなり!ステーキ」事業のセグメント売上高は前年同期比28.6%増の302億円。増収要因は店舗数の増加だ。この半年で82店(海外含む)を新規出店し、期末(6月末)店舗数は472店となった。しかし、1〜6月期の既存店売上高は24.6%減と苦戦。セグメント利益は前述の通り26.6%減の16億円となってしまった。
苦戦の背景は次の3つに整理できる。①ブームが去ったこと、②値上げの影響で顧客が離れたこと、③出店を増やしてきた郊外ロードサイド店で苦戦していること。
郊外ロードサイドでは、大量出店で自社の店舗間で顧客を奪い合うケースが増え、閉店に追い込まれる店舗も出てきている。だが、郊外店で苦戦している要因はそれだけではない。最大の要因はファミリー層を取り込めていないことだろう。
閉店した店舗から車で20分圏内に他店舗が2軒
いきなり!ステーキは13年12月に1号店を東京・銀座にオープンしてから、立ち食い形式による高効率運営を武器に、都心の駅前やビジネス街を中心に出店を重ねてきた。1号店出店から3年後となる16年12月末には115店を展開するまでに成長した。余勢を駆って、17年5月に初の郊外ロードサイド型店舗を群馬県高崎市にオープン。以降、ロードサイドでの出店を加速してきた。
こうした大量出店で、自社競合が発生するようになった。例えば、今年8月18日に閉店に追い込まれた「いきなり!ステーキ 君津店」(千葉県君津市)は、車で約15分のところに「木更津店」(同木更津市)、同約20分のところに「イオンモール富津店」(同富津市)がある。いずれもメインとなる来店手段が車で、ターゲット層は大きくかぶっている。この3店舗間で顧客の共食いが起きたと考えるのが自然だろう。いきなり!ステーキではこういった自社競合が増えており、これが苦戦の要因となっている。
昼時でもファミリー客は皆無
そして、より致命的といえるのが、いきなり!ステーキがファミリー向けではないことだ。郊外ロードサイドのメイン顧客はファミリー層だ。だが、いきなり!ステーキはファミリー向けにできているとはいえない。それが苦戦につながっている。
例として、郊外ロードサイド型の「いきなり!ステーキ 八王子松木店」(東京都八王子市)の様子を挙げたい。筆者が平日昼時に同店を訪れたところ、客入りはそこそこだったものの、ファミリーは皆無で、男性1人客かカップル客しかいなかった。一方で、同じ幹線道路沿いで同店からわずか120メートルほどしか離れていない「ステーキ宮 八王子松木店」(同)を平日昼時に訪れたときは、ほとんどがファミリー客だった。
「ステーキ宮」は外食大手のコロワイド傘下のファミリー向けステーキチェーンで、全国に約140店を展開する。ほかにも「ブロンコビリー」「ステーキのあさくま」「ステーキのどん」といったステーキチェーンが存在するが、ステーキ宮を含め、これら大手はほとんどが郊外ロードサイドを主戦場とする典型的な「ファミレス」だ。「ステーキ宮 八王子松木店」もその例にもれない。