ステーキオンリーは“母親”受けが悪い

「ステーキ宮 八王子松木店」と「いきなり!ステーキ 八王子松木店」で大きく異なるのがメニュー構成だ。

たとえば子ども向けの「キッズメニュー」。ステーキ宮は小さいサイズのハンバーグやカレーライス、グラタンといったキッズメニューが充実している。また、小学生以下はドリンクバーが無料になる。

一方、「いきなり!ステーキ 八王子松木店」にはキッズメニューがない。いきなり!ステーキでは一部の店舗でしかキッズメニューの取り扱いがなく、内容も充実しているとは言い難い。子どもを取り込む態勢が整っていないのだ。

大人向けのメニュー構成も大きく異なる。「いきなり!ステーキ 八王子松木店」は、ハンバーグ1種類を除いてメインとなる料理はすべてステーキだ。一方、「ステーキ宮 八王子松木店」はステーキのほかに、ハンバーグや鶏肉料理、食べ放題のサラダ・スープ・スイーツなど、幅広いメニューがそろっている

これは、ファミリー客の中で主導権を握る“母親”の取り込みに影響する。サラリーマンや独身男性であれば「毎回ステーキ」といったことも珍しくないかもしれないが、“母親”は「さまざまな料理を楽しみたい」「家族には肉以外のものも食べてほしい」と思う人が少なくない。メニューのほとんどがステーキに限られるいきなり!ステーキは、その点で選ばれにくいはずだ。

狭くて仕切り付きのテーブルは家族には向かない

ファミリー層の取り込みでステーキ宮に軍配が上がるのは、メニュー面だけではない。店舗の造りも大きく影響している。「ステーキ宮 八王子松木店」はテーブルが大きくて広々としており、複数人で食べるのに適している。一方、「いきなり!ステーキ 八王子松木店」は1人用の小さなテーブルを4つ集めてテーブル席としているほか、テーブルを横に区切る仕切りを設けているため、1人あたりの面積は広くはない。1人で利用するのには十分だが、複数人の場合は利用しづらい。

これは八王子松木店に限った構造ではなく、いきなり!ステーキの郊外ロードサイド店はこうしたスタイルを採っている。都心店とは違い、立ち食いではなく着席して食べるスタイルをとっているが、テーブルを小さくしたり通路幅を狭くしたり、食べ放題の食材を置くスペースを省いたりしている。その狙いは高効率運営の実現だ。

これは1人客とカップル客の取り込みという点では成功している。だが、ファミリー層が鍵を握る郊外ロードサイドでは限界がある。