ベッドに入るのは、入浴から90分後

寝つきが悪くて悩んでいる人が少なくないでしょう。そこで誰でも簡単に入眠できる効果的な方法をお教えします。ポイントは体の温度です。

睡眠に影響を及ぼす体の温度には2種類あって、その1つである体の内部の「深部体温」は、睡眠中に下がって臓器や筋肉、脳などを休ませます。もう1つは「手足の皮膚温度」です。覚醒時は通常、深部体温のほうが皮膚温度よりも2℃ほど高くなっています。

そして健康な人の場合、入眠前には皮膚温度が上昇し、手足がポカポカすることで放熱を行い、深部体温を下げます。そうやって皮膚温度と深部体温の差が2℃以下に縮まることで、黄金の90分が生まれます。

では、皮膚温度と深部体温の差をどのように縮めればよいのでしょう。日本人に適した最も効果的な方法は「入浴」です。

私たちと秋田大学との共同実験のデータによれば、40℃のお風呂に15分浸かった後の深部体温は普段よりも0.5℃上昇し、皮膚温度も0.8~1.2℃上昇することがわかりました。この「深部体温の一時的な上昇」というのが大事な点です。なぜなら、深部体温は上昇分以上に下がろうとする性質があるからです。

0.5℃上がった深部体温が元に戻るまでの所要時間は約90分。その間、体からは汗とともに熱が放出されます。そして90分を過ぎると、深部体温は元の温度よりさらに低下する一方、放熱を続ける皮膚温度はさほど下がらず、深部体温との差が2℃以内に縮まります。このタイミングで眠りにつけばスムーズに入眠でき、深部体温の低下とともに深い睡眠に入れます。図3のように就寝の2時間前に入浴するのが理想です。

なかには入浴後すぐ、体の温まった状態で寝る人もいると思います。しかし、質の高い睡眠のためには逆効果です。こうした体温と睡眠のメカニズム(生理学)を理解しておくことが大切です。

寝る前に90分も取れないという人もいるでしょう。その場合は、40℃以下のぬるいお湯に浸かるか、シャワーがおすすめです。深部体温はそれほど上がらないので、元に戻る時間も短くてすみます。ただし、大きな入眠効果は期待できません。

また、質の高い睡眠をとるためには、日中の活動も大切です。特に朝の過ごし方に気をつけてください。