MMTはなぜ支持されるのか?

にもかかわらず、米国のリベラル派を中心にMMTは根強く支持される。その背景には所得格差の広がりなど、市場経済への不信があるのだろう。欧州諸国では財政危機の後の緊縮財政への反動という面もある。

わが国ではどうか?

MMTを脱デフレの新たな処方箋とする向きもあるが、繰り返すが、これは誤解である。MMTが目指すのは脱デフレではなく、政府が主導する(慢性的な需要不足を埋め合わせる)経済の再構築、いわば「大きな政府」だ。金融政策を補完する(助ける)ための財政政策でもない。MMTでは金融政策は財政政策(赤字)の帳尻合わせに使われている。もっともMMTに限らず、ヘリコプターマネー論やシムズ理論(財政の物価理論)など痛みを伴う財政再建は必要ないという「奇策」がわが国では流布してきた。いずれもMMTとは理論的・思想的な背景を異とする。

これらがもてはやされるのは消費税の増税を含めて厳しい財政再建しないで済む理由であれば、何でも良いからかもしれない。どの奇策も正しいという確信があるのでなく、そうあってほしいという願望もあろう。危険なのは、わかりやすい、あるいは聞き心地の良い主張が必ずしも正しい処方箋ではないということだ。

佐藤 主光(さとう・もとひろ)
一橋大学経済学研究科・政策大学院教授。
1992年一橋大学経済学部卒業、98年クイーンズ大学(カナダ)経済学部 Ph. D取得。専門は財政学。政府税制調査会委員、財務省財政制度等審議会委員などを歴任。2019年日本経済学会石川賞受賞。主な著書に『地方税改革の経済学』など。
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