ビジネスにどうしても欠かせない戦略的

パートナーに、厳しい要求や新たな計画を提示するときには、慎重にことを運ぼう。彼らの機嫌を損ねれば、致命的なダメージを招きかねない。

ビジネスパートナーはすべて重要だが、なかでもとくに重要なパートナーがいる。たとえば、主要部品のサプライヤーは代わりがきかないことがある。

1例として、2つの架空の会社──コンピュータおよび周辺機器を製造しているブラトルベリー(B社)と、同社のインクジェット・プリンター用にプラスチック製インク・カートリッジを供給しているヴァイアテック(V社)の関係を考えてみよう。両社の10年におよぶ関係は双方に利益をもたらしてきた。年間の契約額は過去5年間の平均で3000万ドルに達している。

だが、B社の総売り上げはこのところ予測を下回っている。おまけに、同社のサプライヤーの多くが同社の定期的な見積もり要請に不満を募らせていることが調査で明らかになった。2年ごとに新たな契約交渉を行うことは、B社にとってもサプライヤーにとっても時間と経費を要することだった。

そのためB社の経営陣は、戦略的パートナー──つまり、V社のようにきわめて重要な資材を供給している企業とともに、コストを削減する方法を模索することにした。これらのサプライヤーは簡単には取り替えがきかなかったし、短期的な企業目標を達成するにはこれらの企業の協力が不可欠だった。

このような関係には特別な注意と対処が必要だ。きわめて重要なパートナーと交渉する際には、ネゴシエーターは一方ではできるだけ低い価格を引き出す必要があり、他方では協力関係を維持・強化する必要があるため、その2つをうまくバランスさせなくてはいけない。

戦略的パートナーと交渉する際には、通常の交渉戦術や交渉戦略をどのように調整すればよいか──その5つの方法を次に紹介しよう。

(1)相手の独特のニーズには敏感に

長期的な戦略的関係を維持する意欲を相手に伝えるためには、ネゴシエーターは互いの考えや思いにじっくり耳を傾ける必要がある。つまりは、ニーズを突き止めるために相手と頻繁に会うということだ。

V社を戦略的パートナーと見定めたのち、B社は同社に対し、年間コストの5%引き下げと引き換えに、より長期の契約を結ぶという案を提示することにした。それに加えて、このコスト引き下げを可能にする創造的な方法を見つけるために、仕様や規格を変えるなどの協力を惜しまないと約束した。