売り上げを伸ばそうという各部門の熱意が、実際にはとんでもない額の無駄をもたらしている場合がある。得体の知れない「共有コスト」の実態を解明し、事業をシンプル化することでこの無駄を排除しよう。
今日のマネジャーは成長を生み出さねばならないという強い重圧を感じている。だが、実際に、売り上げを伸ばそうとする熱意が、高い代償をともなう手に負えない複雑さをもたらし、そのため事業を構成する個々の要素がぼやけて全体の収益性が下がることがある。
たとえば、販売やマーケティングや設計のスタッフは、概して新製品を発売したり、新規顧客を獲得したり、新市場に参入したりすることをめざす。マネジャーは事業全体への累積的な効果を顧慮せず、製品やブランド、販売経路や顧客を1つずつ追加していく。高価な生産資産を活用する必要がある製造部門のスタッフは、新規の大量受注のチャンスに対応可能な計画を立てる。つまり、製造システムや販売システムに無理がかかるほど設備能力をフル稼働させるのだ。
また、合併や買収は、企業の戦略的ポジションを強化するために行われるのに、往々にして1つにまとめたり簡素化したりしにくい、大きいばかりでバラバラの事業環境を生み出す。
事業の複雑さが増すと、簡単には発生元を突き止められない会社全体にまたがるコストが生まれる。また、個々の構成要素の利益貢献度が明確に把握できなくなり、何をいくらで誰に売るべきかについて上級マネジャーが正しい決定を下すのが困難になる。
個々の製品やブランド、販売経路や顧客の実際のコストを詳しく調べよう。そうすれば、全レベルのマネジャーがバリュー・チェーンの各リンクにこうした複雑さが与えている影響を理解し、それを踏まえて戦略を練り直せる。