交渉において、「人数が多い」ことはメリットと考えられている。しかし、それはチームのメンバーが互いを理解し合い、情報と意見を共有しているときに限られるということを忘れてはいけない。

「数は力なり」という広く行き渡っている考えからすると、チームの人数が多いことは負担ではなく利点のはずだ。だが、この考えは、チームのメンバーが交渉の準備を十分に行わないという、よくある失敗につながることがある。チームメートの口から出た譲歩や情報を取り消せるものなら取り消したいと、交渉中に思った経験はないだろうか。

チームで交渉する際に重要なのは、チームが機能するときの仕組みを理解することだ。本稿では、徹底的な準備を行うことでチーム交渉が円滑に進むようにする方法を紹介しよう。

チーム交渉が最善の策である場合

交渉の席にチームを同行させることにはいくつかの利点がある。第1に、チームは包括的な解決に至るための新しいチャンスを生み出すことができる。研究者のレイ・トンプソン、エリカ・ピーターソン、スーザン・ブロットは、チーム対チーム、チーム対単独のネゴシエーター、単独対単独という交渉の3つの形態を比較した。そして、少なくとも一方がチームの場合には、単独ネゴシエーター同士の場合より互いに好成果を得られることに気づいた。チームのほうが個人よりも、とりわけ論点や関心事や優先事項に関する議論や情報の共有を促進するのである。

チームはまた、単独のネゴシエーターより強力で優位に立っていると感じている。コーネル大学ジョンソン経営大学院のキャスリーン・オコーナー教授の研究によると、上司に対して説明責任を負っているときのように大きなプレッシャーがかかっている状況においてさえ、チームネゴシエーターは単独ネゴシエーターほどピリピリしたり重圧を感じたりしないという。人数が多いことで、安心感が生まれるのだ。

しかし、チームの可能性は十分に活かされないことがある。メンバーの一人が高い分析能力を持ち、別の1人が膨大な専門知識を、もう1人が関係構築能力を持っているとしよう。これらの要素が合わさったら強力なチームになるはずだ。だが、重要な問題──いつ譲歩すべきかという問題など──についてメンバーの意見が食い違っていたら、そのチームはそうした能力を活かせないことになる。

デボラ・グルーエンフェルド、マーガレット・ニール、キャサリン・フィリップス、それに私を加えた4人の共同研究によると、それまで一緒に活動したことのないメンバーで構成されたチームは、情報を蓄積することができず、問題を解決できないという結果が得られた。それに対し、互いに馴染みのあるメンバーで構成されたチームは、独自の情報を蓄積して、同じ問題を難なく効果的に解決することができる。互いをよく知っていることで、メンバーはさまざまな情報を共有し、解決策を見つけるために必要な、建設的な論争を行うことができるのだ。