新規採用者が、自力で社内ネットワークを開拓するのは容易ではない。これは、管理職レベルでも同じことだ。ちょっとした気遣いや支援によって、新しいマネジャーの適応スピードは大いに加速される。
新規採用マネジャーが、職場に早く溶け込むことができれば、形どおりの、あるいは漫然としたオリエンテーションを受けるよりもはるかに早く組織のために価値を生み出すことができる。離職率が上がっている昨今、迅速な職場への適応はとくに重要になっている。キース・ロラッグ、サルバトーレ・パリーゼ、ロブ・クロスの3人は、「Getting New Hires Up to Speed Quickly(新規採用者に早く力を発揮させる)」(Sloan Management Review, Winter 2005)で、アメリカ労働省の調査を引用して「アメリカの全労働者の25%以上が1年未満で離職している」と述べている。そのうえ、会社の事業再編や新しい競争相手の登場、それに技術の進歩によって、職場における役割や責務が変化しており、新規採用マネジャーが早く仕事のコツを覚える必要性はよりいっそう高まっている。
迅速なスタートの重要性が高まっているにもかかわらず、新規採用マネジャーは人的ネットワークを築くにあたり、大きな障害にぶつかる。第1に、多くの経営幹部が、新マネジャーは社内ネットワークを自力で開拓するだけの社会的スキルや分別を備えているはずだと考えて、彼らを紹介して回ることにほとんど時間を費やさない。しかし、なんらかの初期支援と学習の枠組みがなければ、新しい同僚に自力で接触することは、容易なことではない。
職場における文化的・世代的な多様性の拡大はえてして新しい課題を突きつける、とシンシナティのグローバル・リード・マネジメント・コンサルティングのマネジング・パートナー、ビンセント・ブラウンは語る。たとえば、「新しい会社で働き始めたばかりの年配のマネジャーは、自分より上のポジションの人にだけアドバイスや情報を求めればよいという古い考えを持っているかもしれない」。その場合、そのマネジャーは豊富な知識を持つ同輩や部下とつながりをつくるチャンスを逃してしまう。また、あらゆる年代の新規採用マネジャーが、「ある種の質問──とりわけマーケティング・プロセス、会計慣行、予算作成などに関する質問──をしたら、無能だと思われるのではないかと心配する」と前出のロラッグは言う。
多くの新規採用マネジャーが、幅広い人脈を開拓する時間はまったくないと感じている。直属の部下との関係を築くだけで時間的に手一杯なのだ。
こうした障害に阻まれて、新しいマネジャーはともすると、優れた仕事をするために必要なネットワークを築けない。この問題に対処するため、経営幹部はもっと積極的な役割を果たす必要がある。新規採用マネジャーを早く仲間に引き入れて始動できるように、彼らの人脈づくりを手助けするのである。そうした初期のつながりをもとに、彼らはやがて自力でそのネットワークを拡大していくはずだ。最も有能な経営幹部たちは、新人を早く始動させるために次のような方法を取り入れている。