経営においては、絶対的善でもなく、絶対的悪でもない、「灰色」の判断を下さなくてはならない局面がある。そんな困難な場面で、結論を出すための指針を紹介する。

「自社の責任の可能性」を公表すべきか否か

私は数年前に『Inc.』誌に寄稿した記事で、実際の出来事に基づいて、ビジネスで厄介な倫理的決断を下すことの難しさの真髄を示すジレンマを紹介した。

航空機エンジンの修理を行っている年商2000万ドルの会社のCEOが、航空会社からファクスを受け取った。そこには、彼の会社がエンジン部品を修理した8機のジェット機がタービンの不具合のため緊急着陸を余儀なくされたと書かれていた。「貴社が修理した部品が問題を引き起こした」と、航空会社は主張していた。1時間もしないうちに今度は電話が入って、もう1機が同じ理由で緊急着陸したと告げられた。その1時間後に、また電話が入った。全部で11機が、航空会社の主張によると、この会社が修理した部品のせいで緊急着陸したのだった。