カテゴリー変更だけで「適度な不一致」になることも
革新的新製品が既存カテゴリーと「極端な不一致」をもたらす可能性のある場合、消費者の理解、受容を高めるために企業には二つの選択肢があります。一つは、ここで説明したように適切なイネーブラーを提示することです。CRYSTAL PEPSIが天然水からつくられていれば、消費者は受け入れていたかもしれません。
イネーブラーは、製品コンセプトの説明、広告に含めるメッセージ、製品そのものに関する材料・素材、色や形状などのデザインなど、さまざまな形態をとりえます。
もう一つは、そもそも「極端な不一致」を生み出さない他のカテゴリーや新しいカテゴリーの製品として売り出すことです。たとえば、CRYSTAL PEPSIの商品名を変えて、Cokeとではなく7UPやスプライトなど、はじめから透明な飲料と競合させることです。
斬新なアイデアが浮かんだら、それをそのまま上司に伝えるのはやめておきましょう。上司のスキーマを考えながら、「適度な不一致」になるように意味付けをして伝えると、次は企画が通過するかもしれませんよ。
阿部 誠(あべ・まこと)
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
1991年マサチューセッツ工科大学博士号(Ph.D.)取得後、2004年から現職。ノーベル経済学賞受賞者との共著も含めて、マーケティング学術雑誌に論文を多数掲載。2003年にJournal of Marketing Educationからアジア太平洋地域の大学のマーケティング研究者第1位に選ばれる。おもな著書に『(新版)マーケティング・サイエンス入門:市場対応の科学的マネジメント』(有斐閣)などがある。
東京大学大学院経済学研究科・経済学部教授
1991年マサチューセッツ工科大学博士号(Ph.D.)取得後、2004年から現職。ノーベル経済学賞受賞者との共著も含めて、マーケティング学術雑誌に論文を多数掲載。2003年にJournal of Marketing Educationからアジア太平洋地域の大学のマーケティング研究者第1位に選ばれる。おもな著書に『(新版)マーケティング・サイエンス入門:市場対応の科学的マネジメント』(有斐閣)などがある。
(写真=iStock.com)