「不適切な表現だった」と問題をすり替えるのは間違っている
朝日新聞は6月11日付と13日付の2回、今回の年金報告書問題を社説に取り上げ、安倍政権を批判している。11日付の見出しは「『年金』論戦 まずは政府が説明を」だ。「安倍首相と全閣僚が出席する参院決算委員会がきのう開かれた」と書き出し、こう主張する。
「『年金は〈100年安心〉はうそだったのか』『勤め上げて2千万円ないと生活が行き詰まる、そんな国なのか』。野党の追及に、首相や麻生財務相は「誤解や不安を広げる不適切な表現だった』との釈明に終始したが、『表現』の問題にすり替えるのは間違っている」
「表現の問題へのすり替え」。その通りである。夏の参院選への影響を気にするあまり、お得意の答弁が出てしまったのだろう。
「制度の持続性の確保と十分な給付の保障という相反する二つのバランスをどうとるのか。本来、その議論こそ与野党が深めるべきものだ」
どの指摘ももっともだ。真に安心できる年金制度を構築するためには、経済が推移する節目節目で、「給付の保障」と「制度の維持」に対する柔軟な改革が求められる。その改革を実行するのが政治家だ。
政府の役割は、正確な情報を提示することだ
後半で朝日社説は書く。
「年金の給付水準の長期的な見通しを示す財政検証は、5年前の前回は6月初めに公表された。野党は今回、政府が参院選後に先送りするのではないかと警戒し、早期に明らかにするよう求めたが、首相は『政治的に出す、出さないということではなく、厚労省でしっかり作業が進められている』と言質を与えなかった」
参院選に圧勝して憲法改正にこぎ着けるという安倍首相のもくろみが透けて見える答弁である。
その辺りを朝日社説も見破り、「年金の将来不安を放置したままでは、個人消費を抑え、経済の行方にも悪影響を及ぼしかねない。財政検証を含め、年金をめぐる議論の土台となる正確な情報を提示するのは、まずは政府の役割である」と主張する。正論である。