議論を頼んでおきながら、風向きが悪くなると背を向ける

朝日社説の13日付の見出しも、麻生氏の報告書拒否表明を受け「議論避ける小心と傲慢」と手厳しい。

「報告書は、学者や金融業界関係者らが昨秋来12回の会合を重ねてまとめられた。金融庁が事務局を務め、会合は公開、資料や議事録も公表されている。そもそも麻生氏の諮問を受けて設けられた作業部会だ。議論を頼んでおきながら、風向きが悪くなると背を向けるのでは、行政の責任者の資格はない」

報告書は民間で活躍する有識者らが作り上げたものだ。最初、金融庁も麻生氏も支持した。それに突然「背を向ける」のはこれこそ、手のひらを返す以外の何ものでもない。

さらに朝日社説は主張する。

「麻生氏は『これまでの政府の政策スタンスとも異なっている』という。異論があるなら、受け取ったうえで反論すればいい。不正確なところがあるのなら、より正確なデータや解釈を示すべきだ」

正式な報告書として受け取らなければ、議論が始まらない。報告書に問題があるのなら、受け取ってうえで指摘すればいい。そうすれば突っ込んだ議論ができる。深い議論は、年金制度を維持しながら受給者への的確な年金額を決めていくうえで欠かせない。

国民は年金制度の厳しさから目を背けてはいない

朝日社説とは反対に安倍政権擁護に回るのが、産経新聞の12日付の社説(主張)である。

まず「老後『2千万円』 厳しい現実に目を背けるな」という見出しだ。この社説を書いた論説委員は違和感がないのか。

厳しい現実が分かるから、国民は憤っているのである。その現実を隠そうとした安倍政権に怒っているのだ。

有権者の怒りが参院選で爆発すると惨敗する。そう自民党はこれまでの経験から判断し、報告書の存在をなきものにしようとした。国民は年金制度の厳しさから目を背けようとはしてないからこそ、麻生氏らの答弁に怒りを感じたのである。

産経社説の見出しは上から目線で読者をこき下ろす。産経ファンを欺く、悲しい主張である。産経社説は序盤でこう書く。