成果報酬型のネット広告「アフィリエイト」の仕組み
この大学生社長の説明によれば、サプリのフェイク広告は「アフィリエイト」と呼ばれる、成果報酬型のネット広告の仕組みを使って出稿されていた。簡単にアフィリエイト広告の仕組みについて説明しておこう。
(1)広告主(今回の事例で言えば、サプリ販売会社)が、「ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)」と呼ばれる広告仲介業者に、商品を宣伝する広告の作成を依頼する。
(2)ASPは自社の契約する何人もの「アフィリエイター」と呼ばれる広告制作者に、商品を宣伝する広告サイトの作成を呼びかける。アフィリエイターは個人の場合も法人の場合もあるが、ASPの呼びかけに応じて、商品の特徴やお薦めポイントなどを自分の運営するブログに書いたり、新たに広告サイトを作成したりする。このブログや広告サイトには、広告主のサイトに飛ぶようリンクされたバナーや「購入する」と書かれたボタンも設置しておく。
(3)このブログや広告サイトにアクセスした人が、そこで書かれている内容を見て、サイトの中にあるバナーや「購入する」ボタンを押して実際に商品を買うと、どの広告を通じて商品が買われたのかわかる。
(4)購入契約の成果に応じた報酬がASPからアフィリエイターに支払われる。仲介したASPにも、成果に応じて広告主から報酬が支払われる(報酬額はまちまちだが、今回取材した中では、購入1件当たり、数千円から、中には1万円を超えるものもあった)。
フェイク広告を作ったアフィリエイターがわからない
私たちの質問に、サプリ販売会社の大学生社長は、自社が契約していたASPは約30社あり、今回、見つかったフェイク広告は、この中のいくつかのASPが仲介したアフィリエイターが作ったものだと答えた。
規模にもよるが、ASPの中には何百、何千のアフィリエイターと契約しているケースもある。大学生社長によれば、広告主がフェイク広告を作ったアフィリエイターをたどろうとしても、ASPを挟んでいるので、どのアフィリエイターが作ったのかはわからないという。では、どのASPが仲介したのか、社名を尋ねたが、「それは……ちょっと怒られそうなので」と言葉を濁した。
このサプリの販売会社では、アフィリエイターに対し、芸能人を無断で使った広告を作らないようにと、ウェブサイト上に注意書きを載せているという。そして、広告をチェックする担当者も増やして、目視でのチェックも行っていると説明した。大学生社長は「広告の責任はすべて弊社にあります。僕らの管理、手が行き届いていないことがいちばんの問題です」と話した。
電話がなかなかつながらないことを伝えると、「予想以上に売れて、対応が追いついていない。電話がつながりにくい状況は認識しているので、早速、外注しているコールセンターの人員を増やすようにする」と答えた。
ネット広告市場の急成長の陰で行われる、広告不正の実態を取材するため、プロジェクトチームを結成。クローズアップ現代+「追跡! 脅威の“海賊版”漫画サイト」「追跡! ネット広告の“闇”」「追跡! “フェイク”ネット広告の闇」を放送し、大きな反響を集めた。