「解約保証」ギリギリのタイミングで解約

このまま解約できなかったら、自分に合わない商品にお金を払い続けないといけないのだろうか。考えているうちに不安が募り、時間ばかりが過ぎていった。SNSに「助けてほしい」と書き込むと、今度は「何とか解約できた」という人から、つながりやすい時間帯の情報など、アドバイスをもらうことができた。かれこれ30回ほど電話をかけ、覚えてしまうほど「そのままお待ちください」というアナウンスを聞かされた後、ようやくオペレーターにつながった。

「電話が全然つながらなくて怖かったと伝えたら謝られて、『商品を返送していただければ解約できます』と解約の手順を説明されました」

電話がつながった当初は、「商品を送付した際に添付されていた明細書がなければ、解約を受け付けない。4回分は購入してもらう」と言うオペレーターに、「自分の体には合わないので……」と訴えた。最終的には、サプリを袋ごと返送すれば解約を受け付けるとなって、ようやく解約できたという。「解約保証」と書かれていた期限ギリギリのタイミングだった。

「ネット広告はもう信用できないと思いました。実際にその商品を使っているわけではないのに、顔写真を勝手に使われている芸能人も結構多くて、その人たちもかわいそう。ちゃんとした広告を作ってほしいと思います」

「誰がどんな広告を書いているか、追いきれない」

芸能人やテレビ番組の画像を無断で加工・使用し、体験談をでっち上げ、あたかもその商品を紹介・推薦しているかのように見せかける「フェイク広告」。

なぜこのような広告が、私たちに届くのか。

茜さんが購入したサプリを製造・販売する会社は都内にあった。事情を聞こうと取材班が登記上の住所を訪ねると、そこは住宅街にある一軒家だった。郵便受けには会社名が確かに書かれていたが、インターホンはなく、ノックをしても誰も出てこない。外から見る限り、人気はなかった。

近所の人に話を聞くと、「元は人が住んでいて、1年ほど前に引っ越したと思う。その後、改築したみたい。たまに若い人が来たり、朝、郵便物を回収しに自転車に乗った人が来たりするのを見るけど、普段は誰もいないよ。何をやっているのか、全然わからないね」と言う。

それではと、今度は登記簿にあった代表取締役の自宅の住所を訪ね、出てきた若い男性に話を聞いた。関東地方の大学に籍を置いているが、休学してネットでサプリを販売するベンチャー企業を20代で立ち上げ、社長を務めているという。住宅街にあった一軒家は登記上の便宜的な建物で、実際の業務は別の場所で行っていると説明した。私たちが、フェイク広告の実物を見せると「出ていることは知っている」とあっさり認めた。

「弊社のような通信販売事業は、広告制作者に、仲介業者を介してネット広告を出してもらっており、広告をクリックした人に商品が1件売れたごとに成果報酬をお支払いする形になっています。僕らとしては、誰がどんな広告を書いているか、追いきれない」