つぶやく程度ならリスクは低い

著名人の悪口は、自分のアカウントでつぶやく程度ならリスクは低いが、著名人本人のアカウントにリプライするのはやめたほうがよさそうだ。

書き込む言葉によっても変わる。「殺す」は完全に脅迫だが「消えろ」はグレー。その意味が「テレビから消えろ」かもしれないので、生命・身体への危険が明白ではないからだ。

「また、SNSに送信を繰り返せば迷惑行為になりえます」

迷惑行為の場合には、迷惑行為防止条例が適用される。盗撮やつきまとい行為などと同じ扱いだ。東京都の迷惑防止条例の改正により第5条の2では、「拒まれたにもかかわらず電子メールの連続送信、SNSなどへ連続送信する」ことが迷惑行為として追加された。これに違反した場合には1年以下の懲役または100万円以下の罰金(常習者の場合は2年以下の懲役または100万円以下の罰金)となる。

「もう1つ勘違いしやすいのは“真実であれば名誉毀損にならないだろう”との考え方です」

仮に内容が真実であったとしても、相手の信用や名誉を下げる行為、つまり社会的評価を下げる行為であれば、名誉毀損となりうる。たとえば、万引している子どもを見つけて、その動画をアップロードすれば、名誉毀損になる可能性が高い。相手が違法なことをしていても、相手の社会的評価を下げるような行為は名誉毀損の対象になりうる。第三者が名誉毀損となる内容をツイートしたときに、それをリツイートするのも同様だ。

実際に名誉毀損を問われるケースでは、刑事裁判と民事裁判の対象となる(図2)。刑事裁判では原則として刑法第230条の規定に違反した場合に犯罪となる。一方で、名誉毀損によって生じた損害等を請求するのが民事裁判だ。民事裁判では、損害賠償や慰謝料などの支払いが命じられる可能性がある。

「芸名で活動しているAV女優の本名を暴露して高額な損害賠償に問われたケースもあります」

私生活に影響を及ぼさないための芸名活動で本名を暴く行為は、名誉毀損に該当するわけだ。

性的嫌がらせなどの被害体験をSNSを介して告白・共有する「#MeToo」も慎重に行うべきだ。公共性や公益目的などがなければ名誉毀損になったり、損害賠償の対象となったりする。たとえば、個人が特定される方法で相手の「セクハラ」を告発した場合には、相手の社会的評価を低下させることにつながる。結果、名誉毀損が成立する可能性もあるわけだ。名前を記載していなくても第三者が見て個人を特定できるような表現であればアウト。

#MeToo自体が悪いわけではない。知らない間に被害者から加害者になってしまう可能性があるから注意が必要なのだ。

佐藤大和
レイ法律事務所代表弁護士
エンターテインメント、労働、SNS、メディア対応などを得意分野とし、TV出演をはじめ幅広く活躍。多くの芸能人・企業の顧問弁護士を務める。
 
(撮影=研壁秀俊 写真=iStock.com)
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