データビジネス編▼資金調達、投資、給与振り込みが変わる!

▼暗号資産

仮想通貨の利用環境は、2018年の流出事故を経て、整備されつつある。金融庁は19年3月15日に資金決済法と金融商品取引法の改正案を国会に提出した。その目的を弁護士の堀天子氏はこう解説する。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/DNY59)

「これまでの資金決済法では、イノベーション促進の観点から、最低限の体制整備を義務づけるにとどまっていました。しかし、流出事故を受けて、今回の改正案では利用者保護により舵を切って、資産管理の方法などを明確化しました」

資金決済法の改正案には呼称の変更も盛り込まれた。海外の議論においてこれまで検討されてきた「バーチャル・カレンシー」(仮想通貨)から「クリプト・アセット」(暗号資産)に変えて、規律を考えていこうという流れがでてきた。また、「仮想通貨」は法定通貨と誤解されやすい面がある。そこで、国内でも呼称を「暗号資産」に変更することとした。

投資家から直接、資金調達が可能に

今回の改正案で交換業者は、保管する顧客の暗号資産の流出を防止するため、インターネットから隔離された「コールドウォレット」と呼ばれる比較的安全性の高い方法で管理することが求められる。また、ネットを通じて暗号資産の操作を行うことができる「ホットウォレット」で管理する顧客と同種同量の暗号資産を交換業者が保持することが義務づけられる。流出時の弁済能力を確保するためだ。

「今回の改正案で暗号資産を預けることへの不安が低減し、これまでより投資家もリスクを認識しやすくなるでしょう」

一方で暗号資産は、さまざまな活用法が期待されている。最近注目されているのは、資金調達手段としての利用だ。暗号資産で行う資金調達はICO(Initial Coin Offering)と呼ばれる。企業がトークンと呼ばれる暗号資産を発行し、投資家が購入する。このトークンは投資家同士の売買も可能。企業は投資家から直接、資金調達が可能になるので、短期間で資金を集められる可能性があるなどのメリットがある(図1)。

ただし、これまではルールが不明確であったため、詐欺に利用されることも少なくなかった。今回の改正で、ICOで有価証券に類似したトークンを発行することは金融商品取引法の適用対象となる。今後、トークンを発行する企業には、投資家への情報開示を義務づけていく。また、売買を仲介する業者に対するルール整備も進める予定だ。