ペイロールカードとは、給与支払い用のプリペイドカードのこと。米国などではすでに普及しているという。

企業は銀行などを経由せず、直接ペイロールカード口座に振り込みができる。社員はペイロールカードで買い物の決済ができるほか、ATMで現金を引き出すことも可能。外国人労働者は、事実上銀行口座の開設が難しい、クレジットカードを持ちづらいなどの課題があるが、こうした規定の新設が実現すれば外国人労働者の雇用にいい効果をもたらしそうだ。

ペイロールカードは、資金移動業者がサービスを提供する。銀行などは免許制だが、資金移動業者は登録制で送金サービスなどを提供できる。LINEPayなども登録している。

ただし、ペイロールカードには、デメリットもある。銀行などの場合は、万が一破たんしても預金保険によって元本1000万円とその利息が保護される。しかし、資金移動業者は別途の仕組みで資産保全しており、預金保険の対象外だ。

「顧客の資産は100%の保全が義務づけられていますが、破たんした場合には、資金が戻ってくるまでに時間がかかる可能性はあります」

ペイロールカードへの給与振り込みが可能になっても、全額ではなく一部にするなどの工夫は必要かもしれない。

資産の見える化で、資金調達が多様に

キャッシュレス化はデータビジネスの拡大にもつながる。現金で決済した場合、店舗には顧客データは何も残らないが、決済アプリなどを利用すれば個人情報の蓄積が可能になる。それを活用し、顧客の好みに応じた情報やクーポンを送付して、売り上げアップを狙うことも可能になる(図2)。

「日本でも個人ユーザーのデータを活用し、よりよいビジネスにつなげようとの動きが盛んになってきています。家計簿アプリなどはいい例です」

家計簿アプリは、保有している銀行口座の残高をまとめて確認したり、クレジットカードの利用状況を見たりできる。18年6月1日に施行された改正銀行法によって、銀行口座の残高を照会したり、銀行口座に対する指図を伝達したりする事業者に対して「電子決済等代行業」の登録制が新設され、銀行のシステムにアクセスして一定のサービスを提供する事業者のルールを定めた。金融機関と事業者の連携を促進する内容が盛り込まれているほか、顧客保護の規定も明確にされた。

企業も同様だ。人材の限られる中小企業では、経理や財務に人を割くのは難しいが、複数の金融機関のデータを見える化すれば、管理の手間が省ける。