現金8000億円は日本経済を救うか

生保契約者にとって株式会社化はトク? それとも……
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生保契約者にとって株式会社化はトク? それとも……

第一生命保険が、相互会社から株式会社に転換。東京証券取引所第一部に上場した。

多くの大手生命保険会社は契約者(保険の加入者)がお金(保険料)を出して助け合う、という仕組みの相互会社であり、契約者は社員という位置づけだ。この場合の社員とは、株式会社における株主のような存在でもある。第一生命は今回の株式会社化によって、株主が出資した資金で営利を追求する会社形態に転換したことになる。

第一生命の株式会社化では、契約者約821万人のうち、約738万人に、株式か現金のいずれかが支払われた。

これに伴い、8000億円以上という現金が契約者の家計に移転したことになり、多大な景気浮揚効果を期待する声もある。

だが私は、その効果は限定的なものにとどまるとみている。8000億円がわいて出たわけではなく、あくまで移転したにすぎないからだ。受け取り手のお金が消費に回る分、移転元の運用は縮小することになる。

一方、契約者のうち約83万人は、株式あるいは現金の支給対象外。生命保険では契約時に定められた予定利率によって保険料が決まる仕組みで、実際の運用利回りが予定利率を下回ると逆ザヤが発生する。予定利率が高い時期の有利な契約などが会社の利益に貢献していないとされ、支給なしとなったわけだ。