株数や金額は利益への寄与度に応じて決まる。多く受け取った人はそれだけ儲けに貢献したことになり、手放しでは喜べない。対して、支給の対象外となった人は利益に貢献していない、いい契約だったと考えたい。
支給対象者約738万人のうち、約150万人は株式、残りの人は現金が支給された。株式の裏づけは第一生命の剰余金など。現金支給はこの株式から一部を売却してまかなっている。
保険会社の利益には、死差益、利差益、費差益、の3つがある。死差益は見込んでいたより死亡率が低いこと、利差益は運用によって予定以上の益が得られること、費差益は事業費が予定より削減できたこと、で生じる利益である。このうち2割以上が契約者に配当として分配されることになっている(配当をなくして保険料を抑えている無配当保険を除く)。残りの大部分が剰余金として蓄積される。株式や現金の支給は過去の契約から生じた利益の還元といえる。
株式会社になっても保険契約は継続されるが、保険会社の利益のうち、契約者に配当される割合は低減するとみられる。営利の株式会社であるため、利益の一部は株主にも配当金として還元しなくてはならないからだ。
今回、株式の割り当てを受けた人が保有を続け、かつ、保険契約を続けるのであれば、経営への参加権を保持できるだけでなく、契約者としての配当と株主としての配当が受けられる。ただし、株価が下がっては元も子もない。安定配当や増配、株価上昇が見込めるかが、株主でいるかどうかの判断基準だろう。
少子化や共働き世帯の増加によって死亡保障の必要度合いが低くなり、日本の保険マーケットは縮小している。存続のためには海外への市場拡大など、新たな戦略が不可欠であり、株式会社になったことでそのための資金調達もしやすい。ただし、買収の危険にもさらされることになり、第一生命は、そういったリスクを承知のうえで株式会社化を決断したことになる。
第一生命以外の大手生保でも、株式会社化の影響について動向をうかがっているはず。今後の生保業界に注目するのに加えて、加入している保険が適正か(保険会社の利益に貢献しすぎていないか)、確認しておきたい。