未曽有のGW10連休が私たちに問うこと
楽しいことは永遠に続けられますが、それとこれとは別です。いくらサッカーや野球が好きな子どもがいたとしても、休みなくそれを続けたら、心身を病んでしまうでしょう。そういう時は強制的にでもストップをかける必要があります。
それにしても、この時期10日間も連続で休む必要があるのかどうか。これは私たち日本人にとっては二つの点で新しいテーマです。
まずゴールデンウィークであるという点です。ゴールデンウィークは4月の末から5月の上旬という、いわば年度の割と早い段階に訪れます。つまり、がむしゃらにスタートした新年度、ちょうど1カ月ほどしたいいタイミングで小休止できるということです。その意味では、5月病の予防にもいいでしょう。
次に10日間という点について。10日間といえば、普通は1カ月の3分の1です。土日が休みだとすれば、通常は1カ月に20日間しか働かないわけですから、いわゆる営業日の2分の1を休むことになります。
それはたしかに日本人にとってはとても長い休みです。先ほども書いたように、夏休みでさえせいぜいお盆をはさんだ1週間程度でしょうから。年末年始にしても土日を含めて10連休になることはそうそうありません。したがって、10日間というのは、もしそれが実現すれば、日本人が休む最長レベルの期間になるはずです。
2つの過ごし方がある
10日間という長さがどういう意味を持つかは、人によって変わってくると思います。ただ、大きく分けると二つでしょう。それは10日間をどう過ごすかということにも関係してきます。
私は哲学者なので、あえて哲学を使ってコース分けするなら、「ハイデガーコース」と「ソクラテスコース」とでもいえましょうか。ハイデガーコースというのは、旅行などやりたいことを存分に楽しむ過ごし方です。他方ソクラテスコースというのは、じっくりと自分を吟味する過ごし方です。
ハイデガーコースから見ていきましょう。20世紀ドイツの哲学者ハイデガーは、時間の概念を再定義し、通常私たちが使っている時計の時間ではなく、いわば心の時間ともいうべき根源的時間なるものを提起しました。時計の時間は、過去から現在、そして未来へと線分上に時間が過ぎて行くと考えるものです。
それに対して根源的時間とは、今ここを起点に、既に過ぎ去った過去も、これから到来する未来も自分の中にあると考えるものです。つまりこの場合、過去も未来も今の自分と関連付けて、今ここにあると考えるわけです。