腸内細菌がスポーツ選手のパフォーマンスを大きく左右することがわかってきた。元サッカー日本代表の鈴木啓太さんは、腸内細菌を解析する会社を立ち上げ、26競技500人以上のアスリートから糞便サンプルを収集。アスリートの食事サポートを始めた。スポーツライターの酒井政人氏が、その最新成果をリポートする――。

「塩こうじ」がスポーツ界で注目を集めているワケ

空前の「塩こうじ」ブームが起きたのは2011年。当時と比べると市場規模は縮小したものの、現在でも塩こうじを使ったレシピは料理サイトなどで盛んに紹介されている。実はその塩こうじ、意外な方面で進化を遂げている。

AuB社長の鈴木啓太氏。(写真提供=AuB)

それに関連して紹介したいのが、元サッカー日本代表選手の鈴木啓太(元浦和レッズ)だ。彼が現役を引退したのは2015年のこと。熱狂的な地元ファンには有名だが、現在は実業家に転身し「AuB(オーブ)」という会社を立ち上げている。驚くことに、鈴木は社長として今、せっせと大便を集めているという。いったいどういうことか。

「塩こうじ」「鈴木啓太」「大便」。この3つがそろい、ある化学変化が起きている。

たとえば箱根駅伝の「山の神」として知られたプロランナー・神野大地(セルソース)も、この3つの要素の化学変化により、走りに磨きがかかり、2020年東京五輪のマラソン日本代表選考会となるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権をつかむことができた。

「塩こうじ」「鈴木啓太」「大便」を結ぶ、点と線

プロランナーの神野大地選手。写真提供=AuB

化学変化の概要を詳しく解説していこう。まずは、冒頭で触れた「塩こうじ」だ。

塩こうじは食べ物のうま味を引き出し、肉などをやわらかくする働きがある。そのため、肉や魚、野菜にも使える万能調味料として人気が高い。ただし、最近は商品の形状が変わっている。それがみそ製造メーカー・ハナマルキが販売している「液体塩こうじ」だ。液体のため計量が簡単で、食材に染み込みやすく、焦げにくい、と利便性が格段に向上した。

「液体塩こうじ」の販売数は右肩上がりで伸びており、タイに専用工場を建設しているほどだ。ハナマルキの戦略はしたたかで、すでに製造特許を取得(日本、米国、台湾)。他メーカーがまねしにくい状況を作り上げている。