元サッカー日本代表が500人以上の選手の「糞便」を収集済

次は、鈴木啓太が代表取締役社長を務めるAuBについて。鈴木はすでに26競技500人以上のアスリートから「糞便サンプル」を収集しており、解析を進めている。

「血液検査、尿検査、体組成だけでなく、これからは『便』が新たな(アスリートなどのの)コンディショニングの方法に加わってくるのではと思っています」(鈴木)

腸内には100億~500億兆以上の細菌がおり、その重さは1kg~1.5kg。腸内細菌は1000種類以上あり、多様性が高いほど健康だといわれている。アスリートは比較的、多様性が高い傾向があるが、個人差は大きい。

鈴木によると、たとえば筋肉をつけたいという課題を持っている選手は、腸内細菌の多様性が低い傾向であることがわかった。また選手や競技によって腸内細菌の種類・数の特徴が異なり、AuBでは、大便(腸内細菌)を調べるだけで、サッカー選手かどうかが92%の確率でわかるようになったという。

「ほぼ同じ遺伝子を持っている双子の兄弟でも、腸内細菌が異なるために、体形が違うことがあります。太りやすい/太りにくい、筋肉がつきやすい/つきにくい、ケガが治りやすい/治りにくい。そういうことも腸内細菌が大きく影響しています。また、腸内細菌の役割には、消化・吸収・排便促進、免疫機能の調整、感染予防、短鎖脂肪酸の産生、幸せホルモンであるセロトニンの産生などがあります。口に入るものに気をつけている人は多いですけど、出たものを気にしている人は多くありません」(鈴木)

左から鈴木啓太氏、神野大地選手、ハナマルキ取締役マーケティング部長の平田伸行さん。(撮影=酒井政人)

液体塩こうじを食べた慶大競走部員の体に起きた変化

そして、ハナマルキ、AuB、慶應義塾大学SFC研究所は共同で、「液体塩こうじ・アスリート腸内環境向上プロジェクト」を昨年3月に立ち上げた。箱根駅伝出場を目指している慶應義塾大学競争部の部員を被験者として、腸内環境への効果およびスポーツパフォーマンスへの効果を検証するものだ。

液体塩こうじの原材料は米、塩、酒精のみで、着色料、保存料などの化学調味料は一切使用されていない。含まれているこうじ菌にはアミラーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ、ペクチナーゼなど30種類以上の酵素が含まれている。

それがランナーにどんな影響を及ぼすのか。

3カ月の実験で、毎日の食事に液体塩こうじを取り入れたグループは乳酸産生菌が57%も増加するなど、免疫力UP、筋肉をつくるサポート、ストレス緩和に貢献する短鎖脂肪酸を作る腸内細菌が増加した。

食事の前後で腸内を観察すると、水やミネラルを吸収するためのエネルギー源になる腸内細菌も増えていたという。簡単にいうと、腸内細菌をターゲットにした食生活を送ることで、アスリートとして活躍できる腸内環境に近づいたわけだ。