「北朝鮮が示した非核化措置は極めて不十分だった」

「もの言う新聞」と自ら宣伝する産経新聞の社説(主張)はどうだろうか。朝日社説と違って大きな1本社説だ。見出しは「最大限圧力の原点に戻れ」「トランプ氏の退席は妥当だ」である。

産経社説は「北朝鮮が示した非核化措置は極めて不十分だったということだ。米国が制裁の完全解除要求をのまなかったのは当然である」と書き出し、次のように指摘する。

「浮き彫りになったのは、微笑を前面に『非核化する』と言いながら、実際には核・弾道ミサイル戦力の保有にこだわり続ける北朝鮮の頑なな姿勢である」

まさに産経社説のこの指摘の通りである。北朝鮮はどこまでもしたたかなのである。それゆえ扱い方が難しいのだ。

間違いなく正恩氏はさらに足下を見てくる

さらに産経社説は書く。

「今回の首脳会談に対する大きな不安の一つは、最小限の措置を小出しにして、米国から最大限の譲歩を引き出そうとする、北朝鮮得意の『サラミ戦術』にトランプ氏が取り込まれることだった。そこに至らなかったのは幸いだ」

サラミ戦術とは敵を少しずつ懐柔しながら思い通りに操っていく戦法のことだ。前述したが、アメリカの民主党の思惑が、思わぬたまものとなって北朝鮮のサラミ戦法から世界を救ったのだ。実に興味深い現象である。

ところがトランプ氏は3月2日にアメリカと韓国が毎年春に実施している大規模な合同軍事演習の中止を決めた。トランプ政権が非核化の米朝交渉を継続する意思があることを北朝鮮側に具体的に示したものとみられるが、これでまた正恩氏は「してやったり」と思うはずだ。正恩氏はさらにトランプ氏の足下を見て突いてくる。