ベンチャー機運を高めた「好循環」

また、福井ベンチャーピッチ登壇企業へのサポート段階では、東海・北陸のベンチャー企業を長年支援しているベンチャーキャピタリストや、福井県出身のベンチャー支援者などの力もお借りしながら、登壇企業のビジネス・プレゼンの磨き上げを指導し、さらなる成長を応援している。

現役の上場企業の社長やベンチャーキャピタリストなど、豊富な経験や専門知識をもつ多数のベンチャー支援者から具体的なアドバイスを得られることで、不安や悩みが解消され、モチベーションが上がる。その好循環が生まれたことにより、県内では今、ベンチャー機運が高まっている。

「福井のベンチャー企業を盛り上げたい」という熱い思いを核に、組織の垣根を越えて力を貸してくれた県内外のベンチャー支援者の方々のおかげで、福井ベンチャーピッチという「場」を継続することへの希望をつなげることができているのだ。

地方ベンチャー支援の縮図になっている

東京のマネではない、地方らしいピッチイベント運営を目指しはじめた今だからこそ、4回目を迎える次回の福井ベンチャーピッチを、今月末に東京で開催する予定だ。もっとたくさんの方に福井のベンチャー企業を知ってもらいたいという思いから決断した。

数年後の上場を視野に入れている県内有数のベンチャー企業から、勉強会や個別相談を利用しながら1年かけてビジネスモデルを成長させた20代の若手経営者まで、バラエティー豊かな福井のベンチャー企業8社が登壇する。そして当日は、福井のベンチャー企業を応援する支援者も一堂に会する予定だ。

東京のピッチイベントを見慣れているベンチャーキャピタルからみれば、ともすると、福井のベンチャー企業は小粒に思うかもしれない。しかし一方で、その小さな体に秘めた大きな可能性に驚くことだろう。悩みもがきながらも着実に前に進んでいるベンチャー企業がいて、それを全力で応援するベンチャー支援者がいて、地方らしさを模索している担当者がいる。そんな福井ベンチャーピッチという「場」そのものが、地方のベンチャー支援の縮図であり、現実なのだ。

福井ベンチャーピッチ開催をきっかけに、より多くの方々に、小粒ながらもピリリと辛い、地方のベンチャーのありのままの姿をぜひ見ていただきたいと私は思っている。

岡田 留理(おかだ・るり)
公益財団法人ふくい産業支援センター職員/特定社会保険労務士
福井県生まれ。同志社大学卒業後、勤めていた職場を出産を機に退職。子どもが1歳の時、社会保険労務士試験にチャレンジし、合格。翌年、個人事務所を開業。経営と育児と家事を両立させながら、中小企業の顧問社労士、労働局の総合労働相談員、人材育成コンサルタントなどに取り組む。2015年4月に公益財団法人ふくい産業支援センターに入社。県内の創業・ベンチャー支援業務を担当し、現在に至る。(ふくい創業者育成プロジェクト http://www.s-project.biz/
(写真=ふくい産業支援センター/iStock.com)
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