元気な親も、いつかは介護の対象になる。年末年始は「もしもの時のお金」を確認する絶好機だ。ファイナンシャルプランナーの井戸美枝氏は「施設の入居に必要なだけの貯金があるか、日々の介護費用を親の年金で賄えるのかは確認しておいたほうがいいでしょう」という。こうした話を親に切り出すために必要な「事前知識」とは――。
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寿命前の「健康でない年数」男性8.84年、女性12.35年

今年も残すところあとわずかになりました。

年末年始は帰省して、両親と会う方もいるでしょう。高齢になった親の体調が気になる人もいるかもしれません。そこで話し合っておきたいのが「もしものときのこと」です。

「健康寿命」といって、介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間を示す指標があります。厚生労働省によると、2016年の健康寿命は、男性72.14歳、女性74.79歳。同時点での平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳でしたので、その差は男性で8.84年、女性で12.35年。この期間は「健康でない」ということになります。

もちろん、人それぞれ状況は異なりますが、高齢になると、介護を受けたり医療を必要としたりする可能性が高くなるのです。

ただし、健康寿命は、3年に一度行われる「国民生活基礎調査」で「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか?」という質問をして「ある」と回答した人の割合から算出しています。

ここでいう「影響」は、食事や入浴といった基本的な日常動作だけでなく、仕事やスポーツまで幅広いものを含んでいます。たとえば、スポーツをしている健康な人が、思うように体が動かなくなり、「ある」と回答している可能性もあります。

単純に「平均寿命-健康寿命=介護が必要な期間」というわけではありませんので、注意してください。

介護費用 平均494万円というデータあり

別のデータをみてみましょう。

生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査」(2018年度)によると、介護期間の平均(現在介護を行っている人も含む)は、54.5カ月(4年7カ月)でした。介護期間は、前出の「平均寿命-健康寿命」よりも短い結果となっています。

また、同調査によると、介護に要した費用(介護保険サービスの自己負担含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入などの一時費用の合計が平均69万円、月々の費用が平均7万8000円とのこと。

単純に合算すると、69万円+(7万8000円×54.5カ月)=494万1000円。1人あたりの介護費用の平均は約494万円ということになります。