67歳のある女性は、3年前、元大手商社マンの夫と離婚し、約40年間の専業主婦生活にピリオドを打った。以前はお金に不自由ない優雅な生活だったが、今では経済的に困窮している。相談を受けたファイナンシャルプランナーの黒田尚子さんは「離婚の原因は、女性が経済的自立を模索したこと。元夫はそれが嫌だったようで、とんでもない話だ」と憤る。専業主婦が“アンダークラス”に落ちる条件とは――。
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なぜ裕福な専業主婦が“アンダークラス”に落ちるのか

「お金持ちの男性と結婚して、一生安定した裕福な生活を送る」――。

世の中には、そんな「人生の勝ち組」を夢見る女性も少なくないだろう。また、夫がお金持ちではなく玉の輿と言わないまでも、「結婚して、仕事なんか辞めたい」「もう働きたくない。憧れは専業主婦」という女性の声は、いつの時代でも聞こえてくる。

そんな女性にとって、昨年12月、プレジデントオンラインで公開された記事「"結婚したら専業主婦"は下流への入り口」は、衝撃的だったに違いない。筆者である早稲田大学人間科学学術院の橋本健二教授によると、結婚後、夫との離別・死別によって「アンダークラス」(専門職とパート主婦を除いた低所得の非正規労働者)に転落している女性が相当いるという。

「憧れの専業主婦」に潜むリスクなど、その詳細については本文をご一読いただくとして、具体的なデータに基づいた内容は、ファイナンシャルプランナーとして、さまざまな家計の相談を受けている立場から、うなずける面が多々あった。

専業主婦の妻が抱える「5つのリスク」とは?

確かに、専業主婦というポジションは不安定で危険と隣り合わせにある。

特に経済的リスクに関して、自分自身に実収入がなく、結果として「夫に食べさせてもらっている」状況だ。自身の生活基盤を夫の収入に100%依存しているということになる。

これは専業主婦が無価値ということではない。家事・育児はれっきとした仕事だ。しかも、かなりの労力を要する。ただ、それにより収入は得られない。こうした状況で、最低でも5つのリスクが考えられる。

(1)夫の愛情がなくなって浮気されるかもしれないリスク。
(2)夫が病気やケガで働けなくなって収入が減るかもしれないリスク。
(3)夫がリストラされて失職するかもしれないリスク。
(4)夫が死亡するかもしれないリスク。
(5)妻の状況の変化によるもので、妻に愛情がなくなって、離婚したくても経済的な理由から我慢を強いられることもあるかもしれないリスク。