セレブ妻が自立を意識しはじめた途端、夫の嫌がらせが……

最近、ファイナンシャルプランナーとして強く思うのは、夫との死別・離別などによって、経済的に困窮する専業主婦からの相談が明らかに増加傾向にあるということだ。

いったい、なぜなのか。

実は、他人から見れば裕福で安定していた専業主婦が、ある日、「専業主婦の座にのうのうと居座っているのは高リスクなのではないか」とふと思い立ち、「自立」を意識しはじめた途端、夫から嫌がらせや妨害を受けて、離婚せざるを得なくなったケースが少なくないのだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/metamorworks)

東京都内在住の島田マリエさん(仮名・67歳)は、3年前に離婚が成立して、現在、賃貸マンションにひとり暮らしをしている。

元夫は大手商社勤務で、マリエさんも、子どもが小さい頃は、欧米やアジア圏内など駐在員の妻として転々としていた。3歳年上の夫(現在70歳)とは、24歳のときにお見合いし、結婚した。「今思えば、本当に世間知らずだった」とマリエさんは言う。

「短大を卒業した後、地元の企業に就職しましたが、結婚を機に寿退職。1年後に長女を出産し、家族3人そろってしばらくは海外での生活が続きました。それから、娘が中学校に入学する前に、いったん家族全員で日本に帰国し、以後は、海外赴任になれば夫が単身で渡航することに。海外に駐在していた頃は、お手伝いさんを雇い、海外のお客さまを自宅にお招きしてホームパーティーを開いたり、駐在員の妻同士のお付き合いをしたり。経済的にとても恵まれた生活でした」

夫は一切の生活費を口座に振り込まなくなった

しかし、マリエさんが40代後半になったくらいから少しずつ状況が変わってきた。娘が成長して時間に余裕ができたマリエさんは、海外にいた際、趣味で習っていたクラフトアートの活動を始めた。

もともと手先が器用だったマリエさんは、独特の世界観で作品を発表するようになり、周囲から高く評価されるようになった。その結果、知人の紹介で、カルチャーセンターのアート講座の講師を務めるようになり、収入も得るようになったのだ。

もちろん、これまで通り、家事や育児にも手を抜くことなく、きちんと主婦業もこなしているつもりだったが、作品の発表会などが近くなると、製作活動に没頭する時間が増えるようになった。夫はこれが気にくわなかったらしく、何かにつけ嫌みを言ったり、作業の邪魔をしたりするようになった。

そんな生活が10年以上続いた後、再び夫が単身で海外赴任をしたのをきっかけに、夫は一切の生活費を口座に振り込まなくなったのだ。

仕事をしているとはいえ、それで自分と娘が食べていけるほどではない。たちまち生活に困ったマリエさんは、弁護士に相談し、調停の申し立てを行うことになったが、最終的に、離婚が成立するまでに5年以上もかかったという。

「ずっと、夫と娘のために尽くしてきて、自分のやりたいことが見つかって、それに夢中になったのがそんなにいけないことだったのでしょうか?」