競争社会を勝ち抜いた勝者ほど孤独だ

同期の人間を差し置いて出世していく男は、次第に社内では孤独になっていく。社長として頂点を極めると、さらに孤独な状況に追いやられる。オーナー企業と違い、サラリーマン社長の地位は、熾烈な競争に打ち勝ってきた結果だ。それゆえ同期の人間と、仲良くしていられるはずがない。

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サラリーマン社長になると、業界団体や経済団体、国や自治体など社外との新たな関係が生まれる。これまでなかったネットワークが生まれた恩恵により、専門委員や顧問に就任を要請されるなど、活動の場を広げる男もいる。

一方で、社内でしかその力を発揮できないような中間管理職は、社会との接点は非常に限られる。取引先か協力企業だけが社会との窓口になり、商品の売り買いなどビジネス上のつき合いだけでは、相手との関係が深くはなっていかない。

仕事を発注する側にいると、地位と発注する権限があるから相手はつき合うが、部署が異動になると、関係が切れてしまうことも多い。受発注という経済活動以外で、両者の関係を維持する価値を相手が見出さないためだ。

だが出会った人たちと仕事以外でも人間的な接点を持てた人には、チャンスが巡ってくる。仕事の力に加え、人との関係づくりが上手い人なら、その人を雇用したいと考えるオーナー経営者は結構多い。昨日まで仕事を発注していた企業の経営者から、請われてその企業の社員や幹部になり、給与をもらう立場になるのは稀ではない。社外の人たちは、人をよく観察している。人として魅力のある人材なら、人生の後半戦の選択肢は広がる。

強い立場で仕事をするのは、誰にでもできる。弱い人の立場を理解して仕事をしていれば、相手は絶対に忘れない。「エリート」と社内で呼ばれる人材ほど、こうした心遣いができないままに、仕事をしている。

家族が幸せになるために働いたが、家族との間に溝

競争社会とは、闘争社会だ。会社で出世していくことは、同期の仲間から抜きん出る必要があるため、孤独になりがちで、群れることができない。競争することが宿命ともいえる男たちは、生まれながらに群れることができず、ひとりで生きることになる。

結婚して子供が生まれると、その子のため、さらに社会から評価を集め、経済力を高めようと仕事に取り組む。それが高じると夕食を自宅でとることもできない時間まで仕事をする。家族みなが幸せになるために働くことが目的だったのに、家族との間に溝が生まれてしまうことさえある。