仕事が終わっても自宅に足が向かず、街をフラフラする「フラリーマン」が増えている。マーケティングコンサルタントの酒井光雄氏は「マイホームを買い、子供の教育費がかかるため収入を上げようと懸命に仕事をするが、妻子の待つ家には自分の居場所がなく、一人で居酒屋やバーでボーッと無為に時を過ごすビジネスマンは少なくない」という。「ワケもなく一人になりたい」心理とは――。

※本稿は、酒井光雄『男の居場所』(マイナビ新書)の第2章の一部を再編集したものです。

趣味の世界に浸る夫の気持ちは「ひとりになりたい」

幼少期にはまり、大人になってもなお手放せないモノやコトがある男性は結構いる。代表的なのが収集趣味で、フィギュア(美少女・萌え系・アニメなど)、モデルガン、模型(クルマやバイク、ロケットなどのスケールモデル。戦艦や戦闘機、戦車や装甲車などのミリタリーモデル、ガンダム、宇宙戦艦ヤマト、スターウォーズなどのキャラクターモデルで、ガンプラ(※1)もここに入る)などがある。

※1 「機動戦士ガンダム」のシリーズに登場するモビルスーツ、モビルアーマーと呼ばれるロボットや戦艦などを立体化したプラモデルのことで、1980年に誕生した「1/144ガンダム」以来、約35年間でおよそ4億4500万個が販売されている。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TinaFields)

学生時代にはまったNゲージ(※2)の鉄道模型をたくさん買い揃え、独身時代には自室で存分に走らせることができた。だが結婚し子供が生まれてからはレールをリビングルームに敷くことなど許されず、もう何年も押し入れに入ったままになっている。本人の知らぬ間に、模型は卒業したと思われ、妻に捨てられてしまった男もいる。

※2 Nゲージの名称は、9(英語ではnine)の頭文字に由来し、1960年頃にヨーロッパで商品化され、軌道(レール)幅を9ミリメートルの規格にした鉄道模型のこと。この軌道間隔に合った車輪をつけた車両やレール、駅舎やジオラマ風景などの模型までNゲージ製品として販売されている。大きさや価格が手頃なため、日本ではNゲージの製品と愛好者が多く、鉄道模型の主流になっている。

子供時代からの趣味を引きずっている男性は多く、妻からはもうひとり手間が掛かる子供が増えたように思えるせいなのか、不評だ。

なぜ妻は、「趣味の世界」に浸る夫を許せないのか

アニメーション好きもいる。結婚して子供が生まれると、リビングルームで自由に観ることはできなくなる。せいぜい家族が眠った後で、パソコンで観る程度だ。

妻と志向が異なると、音楽を聴くのも制約を受ける。仮に和製ポップスが好きな人でも、相手がクラシック好きなら、リビングルームで聴くことははばかれるようになる。平日に妻が買い物にクルマをつかう家庭だと、カーオーディオの音楽も妻の好みで埋められてしまう。

中高年でもゲーム愛好家は多い。久し振りにハマるゲームを見つけて熱中し、まさに佳境に入っている時に、家事を頼まれたり用事を任されたりしてゲームを途中で中断せざるを得ない状況が来るのは、例えゲームでも辛い。

男が趣味の時間を愛するのは、「ひとりになりたい」からかもしれない。