なぜ「役員報酬」を実績を反映させた仕組みにできないのか

報酬1億円以上の役員の報酬開示はコーポレート・ガバナンス(企業統治)の健全性などを評価する指標として義務づけられたという背景がある。また、報酬額を決定する方針や算定方法などの開示を求めた背景には、もともと日本企業の役員報酬がどうやって決まるのか誰にもわからない伏魔殿だったということが挙げられる。

アライアンスを組む、ルノーと三菱自動車(写真=iStock.com/UygarGeographic、rafalkrakow)

日本企業の役員報酬は欧米企業に比べて年功主義かつ固定給部分が多い。そのためコーポレートガバナンスの観点から役員の業績責任を明確にするために業績変動給の割合を高めるべきだと言われてきた。

かつての役員報酬は固定報酬と退職慰労金だけであったが、外国人株主などの投資家から、がんばってもがんばらなくても同じ報酬というのはおかしいという声が高まったことも背景にある。

役員報酬は大きく固定報酬と業績連動報酬に分かれ、欧米企業では業績連動報酬のウエートが7~8割を占める。それに対して日本企業は最近でこそ業績連動報酬を導入する企業が増えているが、それでも固定報酬が約7割を占めている。これでは世界標準とは言えないだろう。

世間では報酬が高すぎる、いや欧米に比べると低い、といった議論が横行しているが、役員の仕事ぶりや実績を反映したわかりやすい仕組みであれば、納得も得やすいのではないか。

三菱自動車工業も役員報酬額の算定方法を開示していない

役員報酬額の算定方法を開示していないのは、日産自動車だけではない。ちなみに三菱自動車工業・代表取締役会長としてのゴーン氏の報酬は2億2700万円(2017年度)。だが、役員報酬の算定方法の決定に関する方針には「月例報酬、業績連動報酬、株式等関連報酬から構成されております」と書いてあるだけだ。

東京証券取引所は今年の6月1日、「コーポレートガバナンス・コード」を改定し、役員報酬のあり方についてこう追加した。

「取締役会は、経営陣の報酬が持続的な成長に向けた健全なインセンティブとして機能するよう、客観性・透明性ある手続きに従い、報酬制度を設計し、具体的な報酬額を決定すべきである。その際、中長期的な業績と連動する報酬の割合や、現金報酬と自社株報酬との割合を適切に設定すべきである」

今回のゴーン元会長が引き起こした事件は多くの企業にとって対岸の火事ではない。役員報酬の算定方式を開示していない企業・役員は、決して日産自動車や三菱自動車だけに限らないからだ。そうした企業の社長や役員はどこか後ろめたいものを感じているに違いない。

(写真=AFP/アフロ、iStock.com)
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