振る舞いを学び、男を磨き、きれいに飲む
リーマン・ショックに続き、東日本大震災で接待需要が激減したとはいえ、銀座の高級クラブには上場企業のトップや政治家、芸能人、スポーツ選手などステータスもカネもある、各界の一流の男たちが集う。そこには大人の社交の場として、男を磨くための礼儀作法が満ちあふれている。
「クラブは粋とダンディズムを磨く場所です。女性を口説く場所ではないし、お酒を飲むだけの場所でもないんです。男子力がそこで磨かれ、はじめて一人前の男として周りの立派な紳士たちと同じ場所、一緒の空間を楽しめるわけです。品格が伴っていなければ、店側から上客と思ってもらえません。ましてやお金の使い方を知らなければ、そういう一流の殿方とも会えませんから、若い方には男磨きの場にしていただきたいですね」
こう話すのは政界の重鎮や創業社長など政財界の重要人物が通う「クラブ由美」の伊藤由美ママだ。男の品定めのプロであるクラブのホステスと時を過ごすことによって自らを育て、自分の振る舞い方について学ぶ場でもあるのだという。そんな銀座の高級クラブのママたちは、出世する男、伸びる男、そしてダメになる男をどのように見分けているのか。
「酒席での立ち居振る舞いにその人の人間性の素の部分が出ると思います。普段は品性に欠けているけれど、酔っ払ったら品がよくなるといった人は、まずいません。お酒を飲むときの品性、『酒品』は、その人の本当の姿でもあるでしょう。偉くなる人、人の上に立てる人というのは、『ストレスを解消するためのお酒』『現実逃避のためのお酒』は飲みません。みなさん、酒席では楽しく、ご自身も粋に、ゆったりと寛がれています。きれいに飲めない人は、きちんとした仕事ができない人と思われてもしかたありません」
飲み方が粋できれいな人とはどういう人か。
「例えばお店が混んでくれば、『一人で飲んでいるから、ご新規さんの相手をしてくれば』と、ママやホステスを気持ちよく送り出してくれる。一方、無粋な人は、『こっちが先に来ているのだから、待たせとけばいいじゃないか』と周りを気遣えない。人はどちらのタイプと一緒に仕事をしたがるかといえば、答えはいうまでもないことでしょう」(由美ママ)
「きれいな飲み方が大切です」と話すのは、大企業の社長・役員から政治・芸能関係まで多数の紳士が通うクラブ「ル・ジャルダン」の望月明美ママだ。
「明朗会計でも高級クラブはそこそこ値段が高いのは確かです。長い時間座っていたいお気持ちはわかりますが、仕事のできる、出世街道を走っている人は長居されません。『お金』よりも『時間』を大切にされるからです。出世街道から外れたときに憂さ晴らしにこられて長時間飲んで、つい荒れてしまう人もいます。偉くなるために走っていたときにはこんな姿を見せなかったのに、『年を取られたんだな』と、悲しく感じるときもありますね」
偉くなれない人に限って、支払いが終わってからも居座って、さっと切り上げるスマートさがないという。