見られるのはブランドよりも日頃の手入れ

銀座のホステスは靴や時計で人を見分けるというが、高いものを身につけていればいいというわけではない。銀座のママは、「着るもの、身につけるものは人を語る」ことをよく知っている。「身だしなみで一番大切なポイントは、自己管理ができているかどうかの目安になる“臭い”です」と由美ママは指摘する。

伊藤由美ママ●「クラブ由美」オーナーママ。30年以上にわたり“銀座の超一流クラブママ”として名を馳せる。著書に『スイスイ出世する人、デキるのに不遇な人』など。

「自分の臭いに敏感ということは、相手への気遣いができるということ。服装や持ちものなど洒落ているのに、自分が発する臭いに無頓着という人は自己管理ができていないということです。汗をかいたら人に会う前に制汗スプレーを一吹きする、臭いの強いものを食べたら歯を磨くなど、重要なのは不快と思われない努力をしているかということ。目に見えないものに気を配れることも、上の立場の者として必要な資質の1つでしょう」

では、外見についてはどういう点に気を付ければいいのだろうか。優希ママは「昔から『足もとを見る』と言われるように靴はまず見ますが、カバンも、隅っこが切れていないか、お手入れの状態を見ますね」と話す。

「使い込んで味が出ているものと、使いっぱなしで傷んでいるものとでは、質が全然違います。お得意先の会社に伺うときは会社の看板を背負っていくわけですから、擦り切れたカバンで行くのはどうかと思います。デキない人は他社に行く機会も少ないでしょうし、そのへんの気配りがわからないのでしょうね」

優希ママが話を続ける。

「洋服も、収入が高ければ高級ブランドをいくらでも買えるでしょうが、若い方ではお給料とのかね合いからして、いくら頑張っても限りがあります。そこで大事なのが、清潔感を保ち、身ぎれいにすることです。ヘアスタイルもそうですよね。営業であれば、前髪が目にかかるような髪形より、短髪にしたほうがすっきりして見栄えもします」

褒め言葉は自分を映す鏡わが身を省みて

ただ、身だしなみで褒められたからといって油断してはいけない。ホステスは、けなすかわりに褒め殺すことがあるから、調子に乗るのは避けること。明美ママがそのニュアンスをそっと教えてくれる。

「身につけているものを褒められたからといって、その気にならないほうがいい場合もあります。プロの目を持つホステスさんは、『あらっ』と思うものは、とりあえず褒めておきます。『このネクタイ、ちょっと変だな』と思っても、『どこのネクタイですか。やっぱり素敵!』って一応、興味を示します。それを真に受けて、次々と変わったネクタイをして店にいらっしゃるのもいかがなものかと思いますね」

褒めるのも、褒められるのも難しいものだが、「褒めるプロ」でもある明美ママはどう褒めるのだろうか。

「いくら上手に褒めても、やはり心がなければ“おだて”になってしまい、喜ばれません。だから、心から褒めたいことを見つけ、具体的に褒めることが重要です。とある社長さんから『ママは優しい顔をしているね』と言われたときはめったに言われない言葉ですし、妙にうれしくなりました。『優しい』とか、あるいは『人情味がある』という言葉は、男女問わず相手を褒めて喜ばせるキーワードかもしれません」