北新地歴56年。政財界の重鎮たちが足繁く通う老舗高級クラブママが見てきた、偉くなる人、だめになる人の会話や振る舞いの違いとは。

出世する男の会話や振る舞いは何が違うのか

〈概して、同僚との付き合いは、充分に知り合う迄は深入りしない方が良い。何もかも開けっ広げていると、困ることができてくる〉

大阪・北新地の社交料飲協会が35年ぶりに復刊し、加盟店に配った「ホステス心得帖─おもてなしの条件─」には、こんな処世訓が100以上収められている。

北新地は、東の銀座と並び西を代表する歓楽街。銀座同様、高級クラブが軒を連ね、政財界や芸能人、プロのスポーツ選手が親交を深めたり、情報を交換したりする大阪の夜の“サロン”の場だ。この夜の社交場の作法は、会社員の立ち居振る舞いに通じることも多いとあって、加盟店以外の一般企業などから「ホステス心得帖」についての問い合わせが殺到している。

35年ぶりに復刊した「ホステス心得帖」。ポーチやセカンドバッグにも入る、スマートフォンほどのサイズになっている。

中小企業の経営者や大手企業の幹部から、「基本的なことが、これだけ凝縮されたものは見たことがない」「社員研修にぜひ使いたい」「営業の基本姿勢に通じる。うちの営業マンに読ませたい」などの声が協会に届いているという。中国地方の主婦からは「マナー講座のテキストにしたい」という問い合わせもあった。

「心得帖の内容は、いつの時代でも通じる基本。接客はお客様への感謝から始まることを学んでもらいたい」と、復刊の狙いを話す協会副理事長の山名和枝氏は、北新地広しといえども並ぶ者のない約50年の歴史を持つ「クラブ山名」の名物ママだ。

北新地には、「ホステスたちに言動を見つめられることによって、男は磨かれ、育っていく」という要素もあるといわれる。この道56年、これまで政財界など各界の著名人を接客し、彼らの会話や振る舞いを見つめてきた山名ママに、「できる男」の条件とはどんなものなのか語ってもらった。