どんな会社組織でも避けられない出世・権力争い。その過程では、嫉妬や憎悪が渦巻く。本企画では有名企業の人事担当者から、実際にあった嫌われ事例を話してもらった。自身が出世レースに巻き込まれたときの参考にしてほしい。

▼参加者

銀行●大手銀行元人事部長。20代後半から20年にわたり経営企画・人事畑を歩む。本・支店行員の人事管理業務に精通し、不祥事など懲戒案件に詳しい。一方、幹部職登用の際には、“身体検査”を担当し、不適格として昇進を見送った経験が多数あり。

メーカー●化学メーカー労政担当部長。入社後一貫して人事・労務畑を歩み、外資との合弁企業の人事担当や工場の勤労管理、本社の人事部門など30年以上の経験を持つ。会社の構造改革時には外部の会社と協力して人員削減を担当した経験も。

流通●全国各地に店舗を持つオーナー系小売業の人事部長。入社後、店舗営業、店長を経て人事部門に異動。以来、採用責任者や人事制度企画など20年の人事キャリアを持つ。一方で、オーナー家のお家騒動や役員間の醜い権力争いをつぶさに見てきた。

ゼネコン●建設関連企業の人事担当部長。大手重電メーカーなど複数の会社で人事部門を担当した人事歴20年のベテラン。賃金制度・労務管理に精通し、いまは長時間労働の是正など、働き方改革のシステム構築や会社の風土改善に注力している。

社長を頂点にした壮絶な出世レース

【司会】会社では上にいくほどポストが減少し、頂点の社長は1人だけというヒエラルキーが存在します。激しい昇進レースの過程では、ライバルを蹴落とそうとする人もいますし、嫉妬や恨みが渦巻まく世界です。そこで嫌われる人が出てきそうです。

【銀行】銀行は年次主義ですが、30歳前後で同期の半分が昇進競争から脱落し、40代前半に支店長や本店の課長になる時期に、さらに半分が脱落する。そこまでは互いに切磋琢磨し、いい意味のライバル関係があります。ただ、その上の部長・役員レースになると陰湿な手口を使って相手を蹴落としたり、暗闘もあります。たとえば以前は上司と部下の良好な関係を築いていても、優秀な部下が自分の地位を脅かすような存在になると、権限を使って部下の提案を握りつぶす。そうやって出世の芽を摘むこともやります。

【司会】ほかにはどんな手口がありますか。

【銀行】出向させる手口がよく使われますね。上に「あの会社を再建できるのは彼しかいません」と言い、根回しして追い出す。あるいは懲戒歴を調べ、社外で酒に酔ってケンカし、警察沙汰となって戒告処分を受けた過去の事件のウワサを流すという汚いやり方もありました。

【メーカー】それはうちにもあります。彼の懲戒歴を内々に教えてほしいと人事に頼んでくる役員もいます。何に使うのですかと聞くと、昇格の参考にしたいと。でも本当は蹴落とす材料にしたかったのかもしれない。もちろん社長に依頼されたら詳しく報告しますが。