日産・三菱自動車がルノーに飲み込まれてもいいのか
11月22日、日産自動車は取締役会を開き、全会一致でゴーン氏の会長職及び代表権を解き、グレッグ・ケリー氏の代表権を解くことを決めた。今回、ルノーから派遣されたフランス人取締役の賛同を得て全会一致で決定されたことが重要だ。ルノー側も、ゴーン氏の不正行為に目をつぶることはできなかったと見られる。
ただし、取締役会の決定は、独立性を保ちながらルノーとのアライアンスを維持したい日産にとって、ようやくスタート台に立ったことを意味する。今後、ルノーやフランス政府との厳しい折衝が待っているからだ。
自動車産業は主要国にとって“虎の子”の産業だ。電気自動車(EV)の普及促進など大きな変化が進む中、フランス政府は株を保有するルノーと、ルノーの子会社の位置づけにある日産、三菱自動車の経営を統合する圧力をかけ続けることが予想される。
わが国としては、むざむざ日産・三菱自動車がルノーに飲み込まれることを静観することはできない。これから、厳しい折衝が行われることになるだろう。今のところ、その落としどころが見えてこない。
3社の経営統合を目指すフランス政府
これまでフランス政府はルノーと日産自動車の経営を統合したいと考えてきた。2014年にはオランド政権(当時)のもと、“フロランジュ法”が定められた。これは、政府が2年以上保有する株に関して、その議決権を2倍にするというものだ。
その目的は基本的に雇用対策だ。フランス政府は株を保有する企業への影響力を強め、国内生産拠点などを維持させることで雇用を支えようとした。2015年にフランス政府は日産の経営への介入を強めようとした。この時、フランス政府の経済・産業・デジタル大臣を務めていたのが現マクロン大統領だ。
マクロン大統領は、ルノー・日産・三菱自動車の経営統合を目指している。2015年にできなかった日産との経営統合を実現し、後戻りができないようにしたい。産業政策のプロとして評価を集めてきたマクロン氏にとって、それは悲願達成といってよい。