出資比率を25%に上げれば、ルノーの議決権は消滅する

現状、日産自動車がフランス政府の意向をくんだルノーの要請を断ることは困難だ。ルノーは日産に43.4%出資して議決権を持っている。一方、日産はルノーに15%出資するが議決権はない。だが日本の会社法では日産が出資比率を25%に上げればルノーの議決権は消滅する。日産がルノーの株を買い増し、ルノーの議決権を消滅させるためには、日産が成長戦略を利害関係者に示し、納得を得る必要がある。

何の予告もなしにルノーの株を買い増すことはできないだろう。それは、ルノーと日産の対立が深刻化するとの懸念を市場参加者などに与える恐れがある。また、日仏政府の利害対立を鮮明化させる恐れもある。

日産にとって、ルノーは経営危機を救った恩人であり、43.4%の株式を持つ筆頭株主だ。過半数を保有してはいないものの、事実上ルノーの意向が日産の経営を左右する。ルノーの筆頭株主であるフランス政府が経営統合を重視していると考えられるだけに、3社のアライアンス体制がどうなるか、不透明感は高まったと考える。

真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
(写真=AFP/時事通信フォト)
【関連記事】
日産はゴーンを見捨て経産省を選んだのか
「ルノーの乗っ取り」を防いだ日産の苦悩
ゴーン逮捕で"富裕層の闇"にメスは入るか
トヨタがわざとガタガタの車を作った理由
「独裁者」ゴーン退任こそ、日産飛躍のベストシナリオだった