ジャッキー・チェンが好きな理由

(写真提供=毎日放送)

香川で生まれ大阪で育った河井。ニューヨークで本格的な創作活動に入ったのは24歳の時だった。2003年、立体作品「TreeHouse」がニューヨーク・タイムズ紙で絶賛され、無名だった河井は一躍アート界に躍り出た。それ以来、世界の名だたる美術館やギャラリーから個展の依頼が後を絶たない。日本よりも海外で知名度が高いのは、型にとらわれない自由さのせいだろうか。

現代美術家・大竹伸朗「僕も大ファンです。日本人ぽくない。地球かときどき火星か……」

活躍は実に華々しいが、本人はどこ吹く風だ。ひょうひょうとして気取りがなく、好きな画家を尋ねると、「画家じゃないけど、ジャッキー・チェン。ひょうきんものがいい。ふざけている感じが」とケラケラ笑った。

家族は「創作のチーム」

絵筆一本で世界を渡り歩く河井の傍らには、常に夫のジャスティンと娘の歩虹(ポコ)ちゃんがいる。河井は言う、3人は「創作のチーム」なのだと。

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例えば、作業中に母親をまねて絵筆を握ろうとする娘の歩虹(ポコ)ちゃんを、河井は決して止めようとしない。2人でキャンパスに線を描き、母娘共作になることもあれば、ジャスティンが気を利かせてポコちゃんを外に連れ出しサイクリングへ行くことも。その間に河井は制作に没頭し、息抜きタイムには、母娘水入らずの楽しい時間を過ごす。これが、アーティストを中心とする一家が生み出した生活のリズムだ。作品作りと生活は分かち難く結びついていた。

一方、河井作品の“宣伝部長”を務めるのは、写真家の夫ジャスティンだ。世界中から声がかかるようになった今も、河井お手製のグッズを手売りする地道な活動を続けており、この日は毎年開かれているアメリカ・ロサンゼルスでのアートグッズ即売会へ。河井ワールドをより多くの人に知ってもらう絶好の機会なのだが、当の河井は会場の隅で歩虹(ポコ)ちゃんをあやすだけ。

というのも、河井は人見知りな性格で、売り込みが大の苦手だからだ。

河井「私、ビジネスって全然得意じゃない。作品は欲しいと言われたらすぐに人に(タダで)あげてしまうから……」

河井の商業的な成功は夫のおかげと言って過言ではない。文字通り、二人三脚。互いに補い合って10年になる。

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しかし、こうした暮らしはいつまで続けられるのだろうか。子供が成長すればなおさらだ。

河井「デンマークで暮らすのは想像できるんだけど、日本に住むのは想像できないなぁ。ここなら仕事ができるし、友達もいるし、仕事仲間もいる、ポコも学校に通える」

ただ純粋にアートに打ち込める環境は、どこでも得られるものではないのだ。