かつて「ビットバレー」と呼ばれた渋谷に、再びIT企業が集まりだした。六本木に移転していたグーグルは2019年までに渋谷へ移転。またミクシィ、サイバーエージェント、GMOも渋谷駅前にオフィスを移す。渋谷は米国の「シリコンバレー」のような“IT集積地”になれるのか。法政大学大学院の真壁昭夫教授は「金融面での支援や研究教育機関の招聘など、解決すべき課題はまだ多い」と分析する――。
グーグル帰還で盛り上がる“ビットバレー”再興の機運
東急電鉄や東急不動産など東急グループが再開発を進めている渋谷に、国内外のIT企業が回帰している。特に、9月13日に開業した大型複合施設「渋谷ストリーム」には、グーグル日本法人が入居する。それを受けて、“ビットバレー”の再興を通した渋谷の活性化に期待する市場関係者もいる。
ビットバレーとは90年代後半から2000年代前半にネットエイジ(現:ユナイテッド)社長の西川潔氏が提唱したムーブメントだ。“渋”=ビター、“谷”=バレーをつなげた「ビターバレー」に、デジタルデータの単位である「bit(ビット)」をかけた造語からその名が付いた。
ビットバレーが生まれた背景には、渋谷をIT集積地として世界に影響を与えてきた米国の“シリコンバレー”のようにしたいという国内IT企業などの考えがある。もともと、渋谷は若者向けのファッションやエンターテイメントの発信地とみなされてきた。東急は、そこにグーグルなどの大企業や、ITなどのスタートアップ企業を誘致し、渋谷が起業や新しいテクノロジー開発の場となることを目指している。それが実現すれば、街全体の活力が高まるだろう。具体的には、渋谷を往来する人の数が増え、店舗の売り上げが増加するだろう。それは、商業施設の賃料の増加などを通して同社の収益獲得につながる。
今後、IT先端企業の取り組みは経済成長に無視できない影響を与えると考えられている。渋谷が国際的に注目されるIT産業の拠点となるためには、東急グループなどの企業が政府と連携し、周囲の状況が変化してもITを中心に多くの企業が渋谷に居続けたいと思える環境を整備できるか否かが重要だろう。