企業の壁越えた「割引券」が誕生
牛丼チェーン2位の吉野家ホールディングス(HD)とファミリーレストラン最大手のすかいらーくホールディングス(HD)が企業の壁を越えて、「吉野家」「はなまるうどん」「ガスト」の3チェーンで使える共通の割引券を発行した。
割引券の名称は「3社合同定期券」。販売価格は一律300円(税込)だ。吉野家HDが展開する「吉野家」(国内約1200店)と「はなまるうどん」(同460店)、すかいらーくHDの「ガスト」(同1370店)で使える。
9月10日から10月21日に店頭で提示するたびに、吉野家で80円引き、ガストで100円引きとなり、はなまるでは天ぷら1個(100~170円)が無料になる。期間中、何度でも利用でき、2~4回の使用で元が取れる計算だ。
吉野家HD傘下の吉野家とはなまるは、昨秋と今春、両チェーンで使用できる割引の定期券を発行している。吉野家によれば、「今春実施時には44万枚(1店舗あたり375枚)を販売し、提示率は20%強になった」という。この結果、4月の既存店実績は好調で、客数は前年同月比4.4%増、売上高は7.0%増と大きく伸びた。
「割引定期券」は集客に効果がある――。この認識が広がり、今回はライバルであるすかいらーくにも参加を呼びかける事態となった。
「今日は吉野家、明日ははなまる、週末は家族でガスト」
3チェーンは業態や客層が異なるため、互いに誘客につながると判断したようだ。吉野家とはなまるはビジネスマンの需要が多く、客層は大きく重なっているが、同じグループ企業であるため、広く見れば客の流出は発生しない。また、汁ものであるうどんは、ご飯物の牛丼の補完的位置づけにある。そのため、両者で送客し合うことは2社でのリピート率の向上と顧客満足の向上につながる。
一方、ガストは家族客が中心で、吉野家・はなまるとは客層が異なる。それぞれが補完しあえる関係にあるといえるだろう。
3チェーン合計の1日あたりの来客数は117万人。その内訳は、吉野家が50万人、はなまるが17万人、ガストが50万人だ(筆者の各社への聞き取りによる)。「今日は吉野家、明日ははなまる、週末は家族でガスト」といった利用を見込み、3社そろっての来客者増を狙う。