実際には「(事前に吉野家から4社へ)お声がけさせていただき、実現しました」(ウィズニュース2018年7月18日<吉野家と松屋もコラボ! 外食戦隊「ニクレンジャー」実現までの経緯> )という。ツイッター上では、テーマソングが考案されたり、タニタや花王「ヘルシア」の公式ツイッターアカウントが敵役に名乗り出たりと、大いに盛り上がった。

具体的な活動内容は今後詰めていくとのことだが、まずは11月29日を「いい肉の日」とし、この日に向けてニクレンジャーにやってほしいことをツイッター上で公募し、5社共同で販促やイベントなどを実施する考えを示している。

ニクレンジャーの結成で興味深いのは、戦隊の中に吉野家と松屋が存在していることだ。周知の通り、両社は牛丼チェーンとしてライバル関係にある。しかし吉野家はそれでも松屋に声をかけた。吉野家にとって松屋は「競争相手ではなく共創相手」(吉野家広報)だという。そして松屋はこの申し出を快く応諾し、ライバルが手を握る形でニクレンジャーが結成されるに至った。

争って消耗するより手を取り合う

吉野家はニクレンジャーの結成においても、前出の「3社合同定期券」と同様に「共創」の概念を持ち出している。「競争」して消耗戦を続けるのではなく、「共創」することで新たな需要を生み出し、中食という勢いのある敵に共同で当たるという考えだ。競合度が高い松屋を誘ったことからも、その意気込みのほどがうかがえる。

今回の3社合同定期券が成功すれば、5社による共通の割引券「ニクレンジャー5社合同定期券」を発行することも十分考えられるだろう。そうならないにしても、企業の枠を超えた施策を打ち出す際のモデルになるのではないか。

いずれにしても重要なのは、企業の壁を越えて手を組んだことにある。ライバル関係にない企業が「コラボレーション」という形でタッグを組むことは珍しくないが、ライバル関係にある企業が提携するというのは珍しい。そこまでしなければ生き残れない時代になっているともいえるだろう。

まずは、3社合同定期券の成否が今後を占う試金石となりそうだ。各社の月次動向に注目が集まる。

佐藤 昌司(さとう・まさし)
店舗経営コンサルタント
立教大学社会学部卒業。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。店舗型ビジネスの専門家として、集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供している。
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