「アメ車」(米国産車)は今や米国の不況の象徴のように語られ、ビッグスリーの経営問題が毎日のように新聞を賑わせている。
その筆頭であるGM(ゼネラル・モーターズ)といえば、キャデラック、シボレー、ハマーなど個性的なクルマがそろっているが、日本でのシェアは登録車全体の0.1%にも満たない。
そんな逆風下でGM車を売りまくっている男がいる。ヤナセグローバルモーターズ名古屋支店のセールスマン、長尾政和だ。
「学生時代からアメ車、特にGM車が大好きなんですよ」
明るい笑顔の長尾は、ピンクの眼鏡に赤いネクタイ、手にはピンクのケータイ、腕からこぼれ落ちそうなほど大きな腕時計。まるで芸人かと思うほど奇抜な30歳だ。
見かけ倒しではない。セールス1年目(年度は9月締め)に54台を売っていきなり全国2位、2年目は57台で全国トップ、3年目も57台でトップ。4年目の今年は前年を上回るペースで売っていて首位3連覇も射程距離だ。
実は長尾はセールスマンになる前に、同じ店舗にメカニックとして就職し、GM車の整備を6年間担当していた。が、ある日、長尾は「セールスにかえてほしい」と上司に直訴する。整備士に飽きたのではない。「憧れのGM車が日本で減っていくのが嫌だったので、自分で売ってやろうと思った」のである。
営業で心がけているのは第一印象だ。
「お客さんによって眼鏡や腕時計を1日に何回もかえるんです。派手嫌いのお客さんには地味な腕時計。派手が受けそうなお客さんには、もっとでかい時計をしていきますよ」
これはあくまで名刺代わり。長尾の真価は、メカニック出身の知識と腕、そしてフットワークのよさだ。技術的な質問は、いちいち会社に確認せずに即座に回答できるし、簡単な修理も客の目の前でこなす。