1888年創業の老舗生保であり、年換算保険料で業界8位の朝日生命保険。同社で30年以上のキャリアを積み上げ、輝かしい実績を誇っているのが、法人営業担当の関澤恵子さんだ。2008年度の契約高は全国1万4000人中2位(取材時)。今年度に限らず、例年トップ10内に顔を出す常連だ。
だが彼女の好調をよそに、生保業界、とりわけ03年の旧東京海上との統合見送り以降の朝日生命を取り巻く環境は厳しい。
「私のお客様で解約はありませんでしたが、支社は解約待ちの列で大変だったのを覚えています。破談はショックでしたが、お客様には元気な顔をお見せするしかありませんでした」
さらに今年1月、ムーディーズは、同社の保険財務格付けをBaa3から、支払い能力に疑問があるBa1に格下げした。
「競合増加の影響がないとはいえませんが、選択と集中という方針のもと、メーン商品『保険王』を中心に販売しています」
お世辞にも明るいとはいえない環境下、競合他社の類似商品も多い。「特別なことはしていません」と語る関澤さんにトップ営業の座をキープしている秘訣を尋ねたところ、大事なのは「狩猟」より「農耕」だという。
「これは、お客様と長く良好な関係を築くことをたとえた表現です。しいていうなら、ファンづくりとでもいうのでしょうか。お客様を心から愛し、接するだけ。なかでも、最初の一鍬は深く耕すよう心がけています」
身だしなみや挨拶といった基本マナーはもちろん、心地よいタイミングで相槌を打つことも大事だ。当然、相手の立場で商品提案を行い、ニーズのないものは売らない。こういった姿勢で臨んでいると、「保険屋」に向けられる視線も、次第に信頼のまなざしへと変わってくる。
「聞き役に徹することも大切。喋りすぎる営業担当に有益な情報は入ってきません」
取引先の女性社員と懇意になることもポイントだ。
「取引先の窓口となる総務部では、女性社員が実務を取り仕切っているケースが多く、親しくなることで商談がスムーズに進むことは珍しくありません」