東京・中野区の住宅街にある「サンクス・都立家政店」は一見すると目立たないコンビニだ。業界4位・サークルKサンクスのFC店。最寄りの西武新宿線・都立家政駅から徒歩5分という微妙な立地で、駅前には業界トップの「セブン-イレブン」、飲料・食品に力を入れるドラッグストアなど、競合店がひしめく。
昨年来コンビニ業界は「タスポ(たばこ自動販売機用成人識別ICカード)」導入の影響で好調を維持しているが、この店では、たばこの取り扱いはなし。たばこ販売を行う近隣の「セブン」や「ファミリーマート」に比べて、状況はかなり不利だと言わざるをえない。
にもかかわらず同店は、24カ月連続で売上高が前年比増という快進撃を続けているのだ。この大躍進の原動力が、同店のスーパーバイザー(SV)を務めるサークルKサンクス・第2地域本部運営グループの菊地健一郎さん。人なつっこい笑顔が印象的な35歳の男性である。98年サンクス(当時)に入社。
「FC店オーナーや店長のやる気を引き出すSV」として頭角を現し、現在は中野周辺の8店舗を担当している。「競合店は気になりません。気にしても、仕方ないですから」と明るく話す。
菊地さんが心がけているのは、オーナーや店長の夢を尊重すること。その実現に向けた取り組みをあと押しするのがSVの役割だと考えているのだ。
その方法論は山形・新庄市の店舗を担当した新人SV時代に学んだ。「クリスマスケーキの予約を1000件取って、本社を驚かせる」というオーナーの夢を実現させた際、「結果を出すためには、具体的な目標設定とスタッフ全員を巻き込むことが必要だ」と理解したのである。
「都立家政店」では「社内グランプリで優勝する」との目標を掲げ、接客時の笑顔や効果的な商品の陳列方法などを指導。スタッフのモチベーションを高め、見事グランプリを獲得した。
「笑顔にせよ、陳列にせよ、まず自分でやってみせることが大事。そして相手のいいところをほめる。山本五十六の名言『やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ』の通りですよ。『この商品を売りたい!』という気持ちを持ってくれれば、いい流れができる。自発的にポップを作り、アイデアを提案してくれるようになるんです」