「普通なら故障車を引き取りにいって工場で直してから納車しますが、僕なら現場に行くだけで済みます」

客への調子伺いの電話はほとんどしないが、客のSOSには何を置いても最優先で対応する。

「お客さんに何かあったらJAFよりも早くスッ飛んでいきますよ」

長野県で客が事故を起こしたときは、代車用に自分のクルマをトレーラーに積んで現場に急行したという。

街からアメ車を減らしたくないという長尾の情熱のなせる業だ。そんな長尾のファンになったアメ車好きの客から新たな客が紹介されていくうちにトップセールスの座をつかんだ。

「でも社内を味方につけないと一人じゃ何もできません。たまにですが、僕もつなぎに着替えて整備を手伝います。ベンツを希望するお客さんがいれば担当者に紹介します。すると、逆に僕にも紹介が転がり込みます」

自動車不況も長尾にかかればチャンスにかわる。新聞には連日GMの経営危機が報じられるが、「いい宣伝になってますよ(笑)。『おい大丈夫か』って電話がかかってくれば、売れてないのでかなり値引きしますよと答え、頼まれなくても見積書を置いてきます」。

低シェアやメーカーの経営不振さえも発奮材料にかえる長尾に逆風という二文字はない。「ベンツやBMWに勝つ気でやってます。下と比べてもしようがない。ベンツよりも多くGM車を街に走らせたい。信号待ちでアメ車3台並んでる姿を想像するだけで、ワクワクしますよ」。(文中敬称略)

※順位はJAIA(日本自動車輸入組合)調べ

(山口典利=撮影)