「業界の順位も、商品力も関係ありません。何番手の営業をするとか、他社がどうかという意識もありません。気がつけば、他社の営業マンが私の後をついてきていました」

<strong>篭嶋茂人</strong>●広域営業部SS。1969年、奈良県生まれ。仏教大学社会学部卒業後、同社入社。名古屋1年、大阪9年、東京6年と一貫して営業畑を経験してきた。人間関係の作り方は「相手の話をよく聞いて、相手と一体になろうとする気持ちを大切にしています」。
篭嶋茂人●広域営業部SS。1969年、奈良県生まれ。仏教大学社会学部卒業後、同社入社。名古屋1年、大阪9年、東京6年と一貫して営業畑を経験してきた。人間関係の作り方は「相手の話をよく聞いて、相手と一体になろうとする気持ちを大切にしています」。

エースコック広域営業部SSの篭嶋茂人は、ラガーマンを彷彿させる巨体に人なつこい笑顔でこう話す。篭嶋がコンビニ本部や総合スーパーなど、大手流通を担当する東京の広域営業部に着任して6年が経つ。

エースコックは「はるさめシリーズ」などのヒット作やユニークな商品はあるものの、業界上位ではない。とりわけ東京では、業界最大手の日清食品や明星食品に押されて知名度も低い。

こんな逆境下でも篭嶋は5年あまりで、ある大手コンビニでのエースコックの売り上げを2.6倍にさせた。「篭嶋さんとやった“あれ”、今月はカップヌードルを抜いたよ」などと顧客であるバイヤーから、嬉しそうに電話がかかってくるほどだ。

なぜ業界上位でなくても売れるのか。「相手と一体になる気持ちが大切です。商品ではなく自分を売り込み、相手に一歩踏み込む。一生懸命なのに売れない営業マンの特徴は、自分の言葉で商談しないで、商品を細かく説明するばかり。それならメールで十分でしょう」。

篭嶋の営業はユニークだ。

「おっ、篭嶋ショーが始まるよ」

大手コンビニのバイヤーは笑顔で彼を迎える。噺家が高座に登場するときのように着座するや、篭嶋は話し始めるのだ。「昨日は池袋に飲みにいったのですが、オモロイ酔っぱらいがおりまして……」。大阪とはアクセントがちょっと違う奈良の関西弁。速射砲のように話し続け、やがて、バイヤーは腹を抱えて笑う。ここでは「エースコック」という単語も、コンビニの社名も登場しない。互いを個人名で呼び合い、商談を行っていく。

「これだけ買ってもらわなければ、帰れませんよ」。オーバーアクションをすると、巨体は一層大きく見える。