「人間関係を築くためには、篭嶋という名前で呼んでもらうことです。会社の名前に自分の名前を埋もれさせてはいけない」

個人としての関係ができると、バイヤーは会社の枠を超えて、篭嶋個人を頼ってくる。オリジナル商品開発の企画を、真っ先に投げてくるのだ。バイヤーと2人で京都を訪ねラーメンを食べ歩く一方、エースコック社内での営業にも篭嶋は奔走する。流通企業の要望に応えられる独自の新商品をつくり出すために。

苦心して市場に送り出した商品が売れると、バイヤーから電話がかかってくる。「また、一緒にやりましょう」という言葉をもらうのが嬉しいという。話が面白いだけではなく、仕事の成果を出し続ける。そうすれば売り上げは自ずと伸びていく。

こんな篭嶋には、いくつかの営業伝説が残っている。ある問屋との商談で、洋菓子「ミルフィーユ」の魅力について語りまくった。結局30分の商談時間のうちミルフィーユの話が大半を占め、残り5分で大きな取引を決めた。その問屋では「ミルフィーユの奇跡」として篭嶋の名が語り継がれている。

また、昨年5月、体重が100キロを超えていた篭嶋は、一念発起して減量に挑戦。「これから、昼食は当社のはるさめシリーズしか食べません」とバイヤーたちに宣言し、1カ月で10キロ、2カ月経過時点では20キロものダイエットに成功。ベルトの穴を示し、文字通り体を張った営業で売り上げを伸ばした。

人間関係の築き方、創意工夫で、業界順位とは関係なく営業マンは成果を獲得できる。(文中敬称略)

※順位は『日経市場占有率2009年版』調べ

(大杉和広=撮影)