共同正犯で監督が起訴されても不思議ではない
アメリカンフットボールの日本大学と関西学院大学の定期戦で、日大の選手が関学大のクオーターバック(QB)に危険なタックルをしてけがを負わせた。
日大の「ナンバー2」といわれる監督やその下のコーチは、「つぶせ」という言葉で選手を追い込んだ。アメフトの世界では「選手をつぶせ」との表現を使って叱咤激励することはよく行われるという。
だが反則行為をした日大選手は「つぶせ」という言葉を「相手選手にけがを負わせて立ち上がれないようにすること」と理解した。これまで試合に出してもらえないなどのパワハラ行為を受け、精神的に追い詰められた末の反則だった。
彼はここで監督の指示に従わないと自分の存在が否定されると思った。どうしようもなくなり、相手のクオーターバックに後ろからタックルしたのだ。
これは傷害事件である。けがを負わせた事実はなくならない。しかしそれ以上に選手を追い込んだ監督やコーチ、日大には大きな責任がある。共同正犯として監督が起訴されても不思議ではない。
「選手を追い詰めた責任は重い」
今回も各紙の社説を比較しながら、この問題を考えたい。
5月23日付読売新聞の社説は「選手を追い詰めた責任は重い」との見出しを付け、冒頭から「選手は、危険な反則タックルをするしかない、と思い詰め、突進した。そこまで追い込んだ監督とコーチに、指導者としての資格はない」と述べ、続いて日大の監督とコーチの弁明を書く。
「内田正人前監督は『私からの指示ではない』と、自らの指示について否定した」
「井上奨コーチは、関西学院大の選手を『潰してこい』と言った点は認めたが、『闘志を出してやれという思いだった』と釈明した。相手選手を負傷させろ、との意味ではなかったとも強調した」
危険なタックルをした日大選手は記者会見で、監督とコーチの指示があった、とはっきり述べている。それに比べ、内田前監督と井上コーチの表情はさえなかった。