提供品質ではなく、知覚品質をどう高めるか

一般にストレス対処法には、問題に焦点を当てて状況を変化させる方法と、問題に対する自分の感情をコントロールする方法があります。マクドナルドの従業員に当てはめた場合、問題となっている状況を変化させることはできません。嫌悪感や不快感を感じるからといって、接客しないわけにはいきませんし、混雑する状況を自分では変えられないからです。したがって、自分自身の感情をコントロールする方法を身につけることが重要になります。そのためのトレーニングを導入することを提案しました。

これらの提案が実際にどこまで採り入れられたのかは定かではありません。しかし、かなり参考にされているはずです。なぜなら、その後、マクドナルドはさまざまなキャンペーンを成功させ、売り上げを伸ばしましたが、食の安全、清潔、接客といった基本的な課題が克服できなければ、いくら効果的なキャンペーンを打っても、顧客には受け入れられないからです。

提供品質ではなく、知覚品質をどう高めるか――このことを意識して食の安全、清潔さ、接客に取り組んだことが、マクドナルドの復活につながったと考えています。

岡部康弘(おかべ・やすひろ)
獨協大学経済学部教授
英国カーディフ大学で博士号取得。The International Journal of Human Resource ManagementやAsian Business&Managementなどの学術誌に、仕事に関する価値観の日英比較の研究論文を掲載。
(構成=増田忠英 写真=時事通信フォト)
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