利益の約7割はクラウドコンピューティングのAWS

アマゾンの収益構造を見たときに特徴的なのは、売上の6割を北米から得ていること。一方、利益の約7割はクラウドコンピューティングのAWSが占めています。事業領域は拡大の一途。デジタルワールド内のオンライン書店に始まり、家電もファッションも生活用品も扱うエブリシングストアへと進化。またクラウドも物流も動画配信も無人のコンビニも、そして宇宙事業も行うエブリシングカンパニーへと進化してきました。また足元では、キンドル、アレクサ、アマゾン・エコーなどのインターフェースまで展開しています。

こうしたミッションと事業構造であることを踏まえるならば、アマゾンの狙いも、車載OSから、ハード、ソフト、サービスまでを垂直展開することにあると予想できます。また、ユーザー・エクスペリエンスを追求する以上は、ユーザー・インターフェースとなるクルマ本体、ハードの部分にまで進出するのが、アマゾンにとっては自然な帰結だと考えられます。

つまり、次なるベゾスの野望は、ずばり「アマゾン・カー」です。しかも、前述の通り、まずは物流事業において完全自動運転を完成させると思われますが、いずれは一般の乗用車としても実現されることになるでしょう。

垂直統合で「アマゾン・カー」を仕掛けてくる

CES2018は、スマートスピーカーによるグーグルホームvs.アレクサの戦いが注目されたイベントでした。「ただ話しかけるだけの優れたユーザー・インターフェース」である音声認識AIアシスタントがクルマに搭載される流れは止まらないでしょう。

壇上で、リサーチ会社の経営陣が、スマートスピーカーの動向調査を発表するシーンがありました。現在、米国ではスマートスピーカーの利用率が16%を突破。ちなみに、アマゾン・エコーの同比率は11%、グーグルホームの同比率は4%と、アマゾンが約3倍のシェアを握っています。

注目していただきたいのは「次、どこで使いたいか」という設問に対する回答です。トップ回答は「車のなか」。スマートホームからスマート・カーへ、そしてスマートライフへ。カスタマー・エクスペリエンスのたどり着く先として、ユーザーがそれを要求している以上、「地球上で最も顧客第一主義の会社」アマゾンがそれに応えないわけがありません。

その本質は広範にわたる「無人システム」の構築

それも、究極を目指すならば、アレクサをユーザー・インターフェースとして、ハードまでの垂直統合を仕掛けてくるはず。アマゾンは、キンドルやアマゾン・エコーの大成功によって、優れたユーザー・エクスペリエンスを提供するには優れたハードの提供が不可欠との認識を深めました。ECサイトのOS、ハード、ソフトを垂直統合し、新しいユーザー・エクスペリエンスを提供してきたのが、アマゾンの歴史なのです。ならば、次世代自動車産業においても、同じことを仕掛けてくるはず。

無人コンビニの「アマゾン・ゴー」をはじめ、宇宙事業やドローン事業などにも進出しようとするアマゾンの目指しているものの本質とは、広範にわたる「無人システム」の構築です。これらの事業も完全自動運転という性格を有しているのです。すでに物流倉庫ではロボットを走らせ、宇宙事業やドローンでも先行しているベゾス帝国が、地上においても、まずは物流から完全自動運転を実現させると考えるのは自然なことではないでしょうか。